毛無山(750m)(大野町)A  桧沢の滝登山道コース  単独  03,11,15

残雪期の03,3,22の「毛無山」へ

登山道が開削されて間もない、江戸時代に箱館と江差を結ぶ江差街道がピークを通っていたという歴史的由緒のある山へ再訪

9:45 自宅発
登山地点下山
10:30
10:50
11:15
11:45
12:10
登山口
桧沢の滝
大石の沼
650コル
頂 上
14:10
13:50
13:25
13:05
12:45
[1:40]所要時間[1:25]
14:50 花の湯(入浴)
16:00 帰宅
 4〜15歳までの少年時代を過ごした故郷大野町のこの山は、大野平野の北西に位置し(1)、江戸時代、箱館と江差を結ぶ江差街道がそのピークを通っていて“毛無峠”と呼ばれていたという歴史的由緒のある山である。この山に今秋登山道ができるという情報を昨年の内に耳にしていたので、その前に登っておこうと思い、今年の3月末、山スキーで反対側の「松前藩の番所跡、毛無山山道入口」の説明板が立っている地点から登っていた山でもある。

 そして、この10月に、これまで散策路があった桧沢の滝・大石の沼経由で頂上までの登山道が完成したという新聞記事を目にしていたが、諸々の事情でまだ登れないでいたところ、3日前に、自らHPを開設している大野町の吉田町長さん直々に「毛無山に登山道ができましたので、登ってみてください!」という畏れ多いメールをいただき、慌てて、本日登ってきたという次第である。なお、「桧沢の滝」から先の標識はまだ設置されていないが、来春の山開きまでには整備されそうである。

 「毛無山」 (ケナシ山)という山は、同じ語源と思われる「木無山」も含めて北海道はもちろん東北地方にも非常に多い山名である。漢字で書くと、禿げ山のようなイメージを抱くが、まったく反対で、アイヌ語のケナシ「林野、木原の意」に由来し、ほとんどの山は樹木に覆われた山である。

 さて、この新しく開削された登山道であるが、大野町と江差町を結ぶ国道227号線を江差へ向かい、下二股橋を渡ると直ぐ右側に「二股岳登山口入口」の標識が立っている。そこを過ぎて直ぐ左側に「桧沢の滝・大石の沼入口」の標識が立っている。そこが登山口である(2)。その桧沢の滝経由大石の沼までは営林署が平成7年に造った立派な散策路があり、自分も一度歩いている。このたび、その先からこの山の頂上を繋ぐ登山道を「大野町の自然に親しむ会」が中心となって新しく開削したとのことである。

 朝、天候が思わしくなかったので躊躇していたが、だんだん回復してきたので、9時半過ぎに家を出る。登山口の直ぐ手前に駐車帯があるので、そこに車を置いてスタートする。登山口から大野川に向かって下りて行き、赤い吊り橋を渡る(3)。吊り橋を渡ると、「桧沢の滝まで770m、大石の沼まで1185m」と書かれた標識が立っている。岸の斜面を登り、沢沿いの道を進む。周りの木々の葉はほとんど落ちて、枯れ葉に覆われた道である。

 やがて、その沢は砂防ダムをひとつ越えてまもなく二股に分かれる。水量の多い左股を進む。すぐに黒い岩の上を滑るように流れる滑滝の様相を呈して来て、カーブするとその先に高さ15mほどの「桧沢の滝」が出現する(4)。この滝は、登山口近くの説明板によると「昔からこの沢に滝があるという言い伝えをもとに、有志が平成6年に確認し、桧沢の滝と命名した」そうである。

 その左側の急な斜面にロープと階段が設置されている。この標高差50mほどの登りがこのコースでもっともきついところである。登り切ると沢から離れ、緩やかなトドマツ林を通過する。標高430m付近で向きを東に変えると、左手に二股岳と駒ヶ岳が見えてくる。この付近のピンクのテープに「第一展望台」と書かれていた。この先は、以前、大石の沼まで来たときは笹が覆い被さっていたが、今回はきれいに幅広く刈り払われている。向きをさらに南に変えると「大石の沼」に出る。

 登山口付近の説明板にはこの沼にまつわる次のような伝説がある。「明治10年頃、水田の灌漑用水が不足したので、農民がこの沼に目をつけ、水路をつけて大野川へ水を落とそうと工事にかかり、あと一日位で完成というときに激しい雷雨が発生した。この大石の沼には龍神様がいて、水を流されてしまうといる場所がなくなるので怒っているということで、工事を中止した」とのことである。大石とは、この沢が大野川と合流する地点に大きな石があったことが、その由来となっているとのことである。

 この沼を一周できるような刈り払い道ができていたので、沼をぐるっと回るように進む。沼の北側に502ポコがあるが、その姿とダケカンバの木々を静かな湖面に写している様が美しい(5)。沼を3分の2周ほどして、左手の沢との間の尾根に乗る。以前は、この先に道が続いていたが、そこで戻ってきたのである。その道を進むと、二つの沢の源頭を巻くように南へ登っていく。やがて、稜線の650コルへ突き上げるて深い沢の斜面をトラバースするように新しい道は続いている。周りはブナの疎林と笹藪である。

 やがて、稜線の650コルに出る。そこから711地点までの急な斜面は大きくジグを切って登っていく。刈り払いは幅も広く、実に丁寧な刈り方で、この登山道へ掛ける関係者の意気込みが伺える道である。しかしよくみるとそのジグを切る道は、昔の山道の跡なのではないかと思われるような感じである。当然頂上が“毛無峠”だったからには、この稜線に道があったはずである。左手下を振り返ると。今年完成し、水を満々と湛えている大野ダムが見える(6)。

 711地点を過ぎると、稜線は幅が広くなり斜度も緩やかになる。新しい道はブナの疎林の笹藪の中にくっきりと続いている。その道沿いのブナの木の幹には苔がびっしりと生えている。ということは、霧などに覆われやすいのだろうか?(7) 左手には二股岳から木地挽山、その奥に駒ヶ岳が聳え、眼下には国道227号線が覗く。源頭地形のがけの上に頂上が見えると(7)、左手前に大野平野の展望が広がる(9)。

 最後の登りを詰めると、広く刈り払われた頂上へ到着する。頂上標識はまだなく、ピンクのテープが巻き付けた木の枝が町境界標石のそばに立っている(10)。残念ながら三角点はその付近の笹藪の中のようである。笹藪の中を探そうかと思って掻き分けてみたが、とても無理な状態である。
 
 諦めて、その先に続いている刈り払い道を進むことにする。6分ほど進み、ちょうど函館山と函館湾、そして下北半島までが見えるところまでその道は続いている(11)。その先にさらに延ばして、春の山スキーで辿った林道へ繋げれば縦走が可能であるのだが、その計画はあるのだろうか?などと考えながら、再び頂上へ戻り、簡単な昼食を摂りながら休憩する。頂上の北側には、二股岳から連なるゆったりとした大野町営牧場の木地挽山、その奥に剣が峰にちょっと雲を被った駒ヶ岳の眺望が広がる(12)。

 いよいよ下山である。気持ちよく刈り払われた新しい道をどんどん下る。1時間30分弱で登山口へ到着する。帰路、大野の「しんわの湯」で汗を流そうと思ったら、工事中で休みだったので、無料供用中の高速道路に乗り、函館の石川町に今年できた「花の湯」でのんびり疲れを癒して帰宅する。 


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