<平成23年1月23日北海道新聞・道南版「いさり火」掲載と同文原稿>

「日本三百名山」を登り終えて
          坂 口 一 弘 (函館市在住 66歳)

 昨年9月11日、果てしない青空の下、360度遮る物のない大展望が広がる日本最高峰・富士山山頂に立った・・・教員退職後の夢であり、08年2月、大腸がんを手術した後の新たな目標となって加速した「日本三百名山」(日本山岳会選定)完登達成の瞬間である。 

 40代後半、健康維持と老化防止のために始めた登山・・・それも、自分で計画を立て、自分一人の力だけで充実感・達成感が味わえ、わくわく・どきどき感に満ちた「一人歩きの山」の魅力にハマって18年・・・徐々に経験を積み、ステップアップしながら、これまでに踏破した北海道の山だけでも500山を越える。

 1998年から山行記録をホームページ『一人歩きの北海道山紀行』に公開するようになって、苦楽を共にできる山仲間も増えた。しかし、今でも組織には属さず、一人歩きの気ままな山行が多い。

歴史文化も味わいつつ


日本三百名山の一つ、北アルプスの三俣蓮華岳
の山頂に立った筆者(2008年8月)・
 道外の山に目を向けたのは、時間的余裕ができた退職後・・・退職を迎えた2004年、四国遍路のついでに登った愛媛県の石鎚山で、北海道にはない山の歴史的な魅力にひかれた。

 翌年から北海道の山と併行しながら、道外の山へ足を伸ばすことに・・・その対象として深田久弥氏の「日本百名山」も考えたが、北海道には百名山以外により魅力的な山が多いことから、最初から対象を「日本三百名山」へと広げた。しかし、当初は完登にはこだわらなかった。単に登頂の数だけを競うピークハンターに終わることなく、それぞれの地域の歴史・風土・文化と結びついたその山ならではの魅力をじっくり味わう山旅がしたかったからである。

 10日以上の日程が取れたときに、車をフェリーに積んで車中泊で移動しながら、その地域の山々を登り歩いた。縦走も体力にものを言わせて、料金の高い山小屋は避けてテント泊に徹した。その道外遠征は6年間で18回に及び、全国各地の観光も大いに楽しむことができた。

 北海道の山との一番の違いは、「信仰と結びついた山の持つ歴史の深さ」「岩稜や白い花こう岩の山の多さ」であった。さらには、「充実した登山道や縦走コース」「植生や高山植物の違い」「標高の高さ」などにも感動した。しかし、それは、「原始性や野性味に富み、登山の醍醐味を味わうことができる」「一面に咲き乱れる広大なお花畑」「森林限界の低さゆえに高山の雰囲気を味わえる」など・・・北海道の山ならではの魅力の再認識の山旅でもあった。中には、「なぜこの程度の山が選ばれた?」と思われるような山もあり、北海道からわずか26山しか選ばれていないことに悔しい思いを抱くことも多かった。

 今後も、北海道の山中心のスタイルは変わらないが、年に1〜2度は本州遠征に出て、三百名山以外の山やコースや季節を変えての再訪などを楽しみたい。数にはこだわらないが、やがて、トータルで1000山踏破のときが来ることを楽しみに・・・。 
 
 平成22年9月15日北海道新聞全道版に掲載された「日本三百名山完登」のニュース

http://blog.goo.ne.jp/sakag8/d/20100915

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