新冠富士(1667m)〜イドンナップ岳(1752m) 
 <シュウレルカシュペ川〜夏道コース(1泊2日)>   2名  06,8,3〜4
99,8,14の「新冠富士」へ
7年前、スタートが遅くて時間切れのため新冠富士で断念したイドンナップ岳本峰を目指して、沢からの1泊山行

10:15 夏道登山口へ車を1台デポ
10:40 シュウレル線入口
登下山
地   点
8/3
10:50
11:05
12:55
14:00

シュウレル線入口(390)
入渓地点
610二股
730地点(テン泊)
[3:10]所要時間
8/4
5:15
6:45
7:50
8:35
9:00
9:45
10:00
10:50
11:20
11:35
12:05
12:45
13:10
13:25
16:00
16:45
17:20

730地点
1060二股
藪突入(1350)
夏道合流地点(1400)着
     〃      発
新冠富士着
   〃 発 
三角点ピーク
イドンナップ岳本峰着
    〃       発
三角点ピーク
新冠富士
夏道合流地点着
 〃      発
売山コル
サツナイ沢本流
夏道登山口
[12:05]総所要時間
17:35 シューレル線入口
19:00 新冠温泉レコードの湯
    (入浴・車中泊)

 イドンナップ岳は日高山脈主稜線のナメワッカ分岐から西へ延びる長大な稜線の上にある。山名の由来は、イドンナップ川の水源にあるからで、イドンナプはアイヌ語で蟻の意。昔伐採小屋に無数の羽蟻が飛来したということに由来するという。

 新冠富士までははっきりとした夏道が平成5年に開かれているが、そこから本峰まではブッシュ漕ぎで踏み跡を辿ることになる。日帰り可能な北海道でもっとも長いルートであろう。7年前に夏道から挑んだが、寝坊したために手前の新冠富士(1667m)で断念せざるをえなかった。

 そのリベンジも兼ねて、やはりこの山に登りたいと言っていた同年齢の千歳のTaさんを誘う。2回目の夏道往復はつまらないので、登山道ができる前に利用されていたらしい新冠ダムに流れ込むシュウレルカシュペ川を詰めて、新冠富士の手前からイドンナップまで往復し、夏道を下る計画である。しかし、この沢の情報が『北海道の山と谷』以外にまったくないが、それほど難しくない沢のようである。

○テン場を求めて

 日帰りは無理なので、沢の途中で1泊する予定である。車を1台夏道登山口にデポして、10:50、左岸の「シューレル線」の標識の立つ古い林道跡の踏み跡を辿る。390m地点である。しかし、わずか15分で沢の中を歩くようになる(1)410二股で左岸に続く鹿道?に迷い込んで戻るというハプニングもあったが、滝のない荒れた沢をのんびり進む。610二股を過ぎると傾斜が増し、階段状の流れになり、四肢を駆使することが多くなる(2)昨年の6月以来の縦走装備ではあるが、リュックの重さも気にならない変化のある歩きが楽しい。

 780三股付近でテン張る予定であったが、730m付近の右岸に平坦な地形の河畔林の中に快適な場所を見つける。その先も偵察してみたが、益々狭い急流になり、適当な場所が見当たらない。時間的にまだ余裕の14:00であったが、そこにテントを張ることにする(3)

 河畔林の枝葉の上に覗く青空の下で、沢の音を聞きながら、ウィスキーの水割りを飲み、山談義や人生談義に興じたり、携帯でブログの文章を打ったりと、まったりとした時を過ごす。ちょうど鹿道が交差して彼らの遊び場のようなところらしく、上から眺めた鹿がしばらく威嚇してかん高い声で鳴いていたが、諦めていなくなった。17:00には夕食の準備に取り掛かり、18:00 にはテントに入る。

○小滝の連続

 4:00に目が覚めるが、かなり暗い。ガスに覆われているようである。5:15、ガスが濃く、視界30mほどの中を出発。Taさんペースで登ってもらうために、彼に前を進んでもらう。

 780三股は本流の中股を進む。等高線の混み具合から予想はしたが、遥か頭上から流れ落ちてくる高度感のある登りがずっと続く。当然、数段になって落ちる小滝は予想を超える数である。小滝の連続といった方が適切かも知れない(4)しかし、いずれも釜はなく、その脇を緊張しながらもなんとか越えることができる。ただ1ヶ所、右から合流する凅れ沢を利用し、中尾根を乗っ越して泥壁を緊張して下りて巻いたところがあった。

 そんな緊張ながらも楽しい登りが1時間半ほど続き、1050二股に到着。直進すると新冠富士頂上への直登沢で最後まで厳しい急登が続く。ここは、当初の計画通り、1400m付近で夏道に合流できるはずの左股沢を進む。

 水量も本流の2/3位で、一時伏流するが直ぐに現れる。相変わらず四肢を駆使する厳しい高度感のある緊張の急登は続くが、滝はめっきり少なくなる(5)1300mを越えると、斜度が緩んでくる。やがて水流も無くなり、1350付近から薮に突入する。

 霧雨状態のガスの中の藪漕ぎなので、フェルト靴は非常に滑って腕に負担が掛かる。そのまま谷地形を登り続ければよかったのだが、右の尾根に取り付いたために、遠回りをしたが45分ほどの薮漕ぎで、8:35、予定通りの地点で夏道に出る(6)第一の目的達成である。

○新冠富士から本峰を

 8:50、その地点に縦走装備をデポして、水と食糧だけのサブザックを背負い、半額で買ったトレイルラン用の靴に履き替えて、とりあえずは、新冠富士を目指す。

 前回は熊の痕跡が非常に濃かった急な花畑の登りを越え、ハイマツや帯の中に続く7年前に歩いた道を辿る。45分で7年ぶりの新冠富士に到着。周りはガスに覆われているが、目指すイドンナップ岳だけは、ときどきガスで覆われるがそこまでのアップダウンの激しい稜線も含めて見えているのがうれしい(7)

 15分ほど休んで、10:00ちょうど、7年前に断念したイドンナップ岳を目指して薮の中の踏み跡に突入。前回より踏み跡も非常にはっきりしていて、その間の年月を感じる。

 両手でハイマツなどの薮を掻き分けながらのアップダウンの激しい稜線歩きであるが(8)、ときどき現れる右側の源頭地形の花畑が疲れを癒してくれる(9)50分で、三角点ピークに到着目指す本峰はまだ先である。いろいろ悩んで、「長い帰りの道のりを考えると、ここが限界かも知れない。先にゆっくり下りてます。」というTaさんを置いて、独りで本峰を目指す。

 わずか5mしか違わない本峰を目指して、50m以上の厳しいアップダウンを繰り返す。ガスでよく見えないが、恐そうな白い岩稜の向こうに見えているのが本峰のようである(10)

 足下から切れ落ちている細いコルを慎重に越えて登り切ると、かなり急いだこともあり、三角点ピークから20分で意外とあっけなく、まさかあるとは思っていなかった不似合いなほど立派な頂上標識に迎えられて(11)念願のイドンナップ岳本峰(1752m)に到着。

  あれば最高な周りの眺望には恵まれなかったが、7年ぶりのリベンジを果たした満足感に翳りはない。しかも、情報のほとんどなかった沢からのアプローチである。それにしても、どちらかと言えばこの地味な且つハードなこの本峰までやって来る人は年間何人いるだろうか?この頂上標識の画像も目にしたことはない。北海道で日帰り可能な山でもっとも遠いピークであることは間違いない。それもごく一部の健脚者だけに限られるであろう。

 狭い頂上でそんなことを考えながら、腹ごしらえをして、15分後、長い下山の途に就く。

○身に堪える辛く長い下山

 帰りは30分を要し三角点ピーク通過。さらに40分で新冠富士通過。1500m付近の急な花畑のところで写真を撮っていたTaさんに追い付く。

 リュックなどをデポしておいた沢からの合流地点で、濡れた沢道具などで重さの増した縦走装備を背負う。目的を果たした後だけに、緊張感がなくなり、その重さが余計疲れた身に堪える。前の記憶以上の激しいアップダウンとなかなか下がらない標高にイライラしながら登り返しをしては休み休みを繰り返す(12)

 前回は、日帰り装備で新冠富士から3時間であったが、今回は縦走装備なので4時間以上は覚悟していたが、やはり、4時間半も掛かり、夏道登山口に無事到着。本日だけで12時間強の行動時間である。62歳コンビには上出来のハードな印象に残る大満足の山行であった。

 温泉に入らないでまっすぐ帰るというTaさんとシュウレルカシュペ川入口で別れ、新冠温泉を目指す。

 入浴後、ビール2杯と味噌ラーメンと房のまま揚げたものが2個も出て来て驚いた「ニンニクのだるま揚げ」をたいらげて、駐車場で車中泊体制に入ったが、疲れ過ぎてなかなか寝付けなかった。

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