「平山」から続く

◎吊り尾根越しに「ニセカウ」をピストン
比麻奈山分岐から無名峰とニセカウを望む
 行く手を阻むような無名峰の手前に小さな二つのピーク、その向こうに4つ目のピークとその奥に目指すニセカウが見える(1)。目標2時間、できれば1時間半と見て、ハイマツを掻き分けながらスタート。両側から源頭部が突き上げてくる痩せ尾根で、とくに北側が垂直に切れ落ちているような感じである。周りのハイマツや木の枝に掴まりながら、怖々と歩を進める。一つ目のピークを越え、振り返ってびっくり、平山の方から見るとハイマツに覆われていてこんんまりした感じであるが、反対側から見ると鋭い岩峰なのである。二つ目のピークもしかり。その岩の上で4人が休憩している。「仲間が3人ニセカウヘ向かったが、自分たちはここで待っている。」と言って、ウイスキーを飲んで寛いでいる。
 二つ目のピークとその上に立つ人影
 そして、真ん中に形よく聳える無名峰も、北側から垂直に切り立ち、岩と岩の聞から真下に谷底が覗く大きなギザギザのいくつもの岩峰である。しかも、踏み跡は、ご丁寧にその一番頂点を通過するのである。高所恐怖症が顔を出し、周りに掴まりながら、へっぴり腰で通過する。振り返ると、越えてきた二つ目の岩のピークで休んでいる人たちが手を振ってくれている(2)。そんな変化に富んだルートであるが、人があまり入らないせいであろうか、次から次と現れる花が凄い。恐らく、大雪に咲く花のはとんどの種類があるのではないだろうか。稜線だけでなく、突き上げている源頭部も必ずお花畑になっている。花の山と言われている平山の稜線よりずっと種類も数も多いのではないだろうか。物凄い得をした感じである。このコースはもっと多くの人に歩いて欲しいような、欲しくないような妙な気分である。
 4つめのピークの斜面の花畑
 最後の4つ目の大きなピークは、コルから標高差の一番大きな花畑が広がる急斜面で、踏み跡もはっきりしなくなる(3)。日高の伏美岳とのコルからのピパイロ岳への花畑の大斜面を思い出しながら、花を踏まないように木の枝や笹に掴まりながら直登する。ピークを交わして登り切ったら、頂上は直ぐ目の前であった。
 
 思ったより速い1時間30分でニセカウ頂上到着。先客が4組、14人が休んでいた。清川コースからの登山道がくっきりと根元を巻いている大槍が目の前に聳えている(4)。ガスがまとわり着いて余りはっきりと見えない表大雪の山々や、苦戦して辿ってきた吊り尾根や平山方面の展望を楽しみながら昼食をとり、寝転んだりして45分ほど寛ぐ。
 大槍をバックに
 いよいよ引き返すことになるが、一番苦労した花畑の急斜面はあっという間に下ってしまう。真ん中の無名峰を越えたところで、かなり疲れている70歳という男性を追い越す。こちらが頂上に着いてまもなく戻った3人連れの一人である。前を歩いている連れの二人に「かなり参っているようだから、待ってあげたほうがいいですよ。」と話して、追い越す。
 
 1時間15分で平山稜線に戻る。暫く行くと、行きに二つ目のピークで休んでいた、後からくる3人連れの仲間であると思われる4人が、吊り尾根の方に向かって手を振ったり、大声をあげたりしている。その方向を見ると、あのお爺さんが座ったまま動かないのである。下まで下りて汲んできたと言う冷たい水を御馳走になり、別れる。改めて、ピストンした吊り尾根やニセカウのシンボルである大槍、小槍、そして頂上を目に収め、満足感に浸りながら、それらの展望と別れ、下山に着く。登山道の途中の湧き水をたっぶり飲み、登山口を目指す。
 
 明日の黒岳〜愛別岳登山のために層雲峡へと車を走らせる。かんぽの宿で入浴後、生ビールで喉を潤し休憩する。さらに、これまで何回も夜を明かした駐車場へ向かい、さらにビールとラーメンとぎょうざの夕食をとる。


これより3年後の99年8月の中越林道(新コース)からの2回目のニセカウへ


「北海道百名山紀行」へ   次へ「武利岳」   HOMEへ

inserted by FC2 system