春香山 (907m)  [桂岡コース] 98,5,4(月)

まさに新緑と春の花、泥んこ道と残雪と、まさに春の香りを満喫する。

登山 地点下山
7:20
8:20
9:15
9:40
登山口
土 場
銀嶺荘
頂 上
12:15
11:15
10:40
10:30
[2;20]所要時間[1:45]
遊歩道感覚の新緑の道山名からしても、この山は、絶対この時期を逃しては他に無い。語源は「遥山」らしいが、そんなことはどうでもよい、「春の香りを満喫できる山」の方がいいに決まっている。実際、そんな思いが通じてあまりある山であったし、コースやこの山の歴史、春の花の美事さ、この日出会った登山者の人数からしても、「北海道百名山」から漏れたのが残念であろうと思われるほど、まさに「春香山」そのものであった。

 銭函天狗岳を下りて、昨日のうちに見つけておいた登山口に到着。住宅地の最奥で車を置くような空間もない登山口にはちょっとびっくりする。銭函川の砂防ダムの方からの登山口もあるらしいが、住宅地の道路に駐車して、銭函天狗岳から眺めた残雪の具合からしても絶対効を奏するはずの長靴スタイルのまま出発。
満開のエゾヤマザクラ
 銭函川を眼下に見ながら、平坦で林間の遊歩道感覚の快適な道を進む(1)。15分程で林道にぶつかり、そのカラマツ林の中の林道を10分程進み、「東海大学銀嶺荘へ3.5km 」の標識を見つけ、再び登山道に入る。山容から予想した通り緩やかな道が続く。のんびり春を満喫しながら歩くにはもってこいのコースである。満開のエゾヤマザクラ(2)やシラカバの白い幹と芽吹きの新緑と青空の爽やかなコントラストを楽しんだり、道端のニリンソウ、キクザキイチゲ、エンレイソウなどの花を眺めながら45分程進むと、道端両面にカタクリとエゾエンゴサクの群生が現れ、その中にシラネアオイが点在して咲く、まさに花道といった風情の道が15分程も続く。まさに春香山の持ち味のピークである(3)。
春の花の競演
 やがて、「土場」と呼ばれる林道の終点に出る。ここで初めて石狩湾が展望できるし、沢の向かいには先程登った銭函天狗岳が望まれる。暑くてTシャツ一枚になって10分ほど休んで汗を乾かす。 Tシャツのまま、その「土場」から林の中の斜面に続く残雪で覆われた登山道に取り付く。今朝方かなり寒いと思ったが、この辺りは凍っていたらしく、足跡のついた残雪も堅いままである。

 少し急な斜面を登り切ると、「銭函峠」と合流し、ダケカンバ林の中に平坦な笹藪の道が続く。ここから銀嶺荘までが、残雪と泥んこやぬかるみの連続する道で、もし登山靴だったら、どのようにして歩いただろうかと思うほど長靴がその威力を大いに発揮する場面である。途中のぬかるみにホイールのついた古タイヤを8個並べて橋のようにしている所があり、初めて見ただけにそこまで運んだ努力に感激してしまう。そんな中に、先を進んでいるであろう、どう見ても運動靴の新しい足跡がある。

 やがて、樹間から一面残雪に覆われた目指す頂上への急斜面が見えてくる。すると子供の甲高い声が聞こえてくる。その方を見ながら進んで行くと、林の中に山小屋「銀嶺荘」が現れる(4)。周りでたくさんの小学生が遊んでいる。聞くと、「昨日来て、泊まった」とのこと。
銀嶺荘とその後ろに見える頂上斜面
 その山小屋の裏を流れる川を渡り、いよいよ残雪に覆われた急斜面に取り付く。ただ足跡を頼りに上を目指しての直登である。先を登っている男性が見える。やがて、追い付くと、「歩くのが速いですね。初めて来て、あちこち迷いながらここまで来ました。後をついて行きますので、よろしくお願い致します。」とのことである。足元を見ると運動靴である、「よく、あの道を、その靴で来れましたね。」と感心して言うと、「こんなに酷い道だとは思いませんでした。」とのこと。

 とにかく頂上と思われる方向を目掛けて、残雪に残る足跡を辿り、頂上稜線に出るが、頂上標識が見当たらない。やはり足跡を探しながら、やや標高の高い方へ進んで行くと、若い男性の姿が見える。そこが頂上であった。 頂上は雪もなく、立派な頂上標識が石狩湾をバックに立てられている。追い抜いた男性もやがて到着。裏側に展開しているはずの定山渓天狗岳から朝里岳や余市岳の方の展望は林に遮られてその場所からはよく見えない。

 夏道だという道を少し下がるとようやく見えるようになる。三人で20分程それらの展望を楽しんだり、おしゃべりしたりしていると、下の山小屋に泊まっていた小学生とその家族たちが、手に尻滑り用のビニール袋を持ったり、凧を上げたりしながら、次々と賑やかに登場する。写真をとっては残雪で尻滑りを楽しむなど、頂上付近は30人程のこのグループの遊び場と化す。まさに春山ならではの自然体験そのものである。子供も大人も完全に自然との一体感を楽しんでいる様子にこちらもうれしくなる。
さまざまな彩りの芽吹きの林
 そんな雰囲気の中、50分ほど寛ぎ、一番先に下山を開始する。子供達が尻滑りに興じている中を、こちらも立ったまま滑るように雪の斜面を下る。次から次ぎから登山者が登ってくる。山小屋までの間でも20人程、山小屋から下では 100人近くの人達と擦れ違ったのではないだろうか。凄い人気の山である。

 中には何人かは長靴の人もいたが、そのほとんどが登山靴である。見ると、まさにシーズン初めの履き下ろしと思われる新しい靴もずぶ濡れ泥ろんこ状態である。擦れ違う人達との挨拶もそれ一辺倒である。長靴を履いてきた優越感にちょっと酔いながら下山を続ける。しかし、これも春山ならではの楽しみでもあるわけで、数年前、札幌岳から空沼岳を縦走し、空沼岳の下山時に、自分も同じ経験をしたことから得た教訓・「5月の春山は長靴で」を実践し、それが的中しただけのことである。

 土場から下のざまざまな彩りが美しい芽吹きの斜面を眺め(5)、林のでは、カタクリとエンゴサクの群生を再び楽しみながら下る。その中に埋もれて写真を撮る老人もいたり、その花だけを目的に、土場までの登山を楽しむ人とも擦れ違ったり、人それぞれに、まさに「春香」を楽しめるいい山である。

 ちょうど、今日は25回目の結婚記念日(銀婚式)の日である。私のとっては有意義な半日であったが、午後からは、家族サービスのために家族とホテルレイトンニセコでの一泊旅行に合流するために、ニセコへ向かう。


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