全く思いつき登山ゆえに、地図もガイドブックも持たず、確かここが登山口のはずと然別湖へ注ぐ
トウマベツ川口のところへ行ってみると、やはりそこが登山口であった。30人くらいの自然観察登山ツアーらしいグループがスタートするところを待ってもらって先に出させてもらう。小雨がシトシト降る中を長靴に下はカッパ、上は暑いのでTシャツで傘を差してという出で立ちである。
これまで160近い山に登ってきたが、最初から雨の中に入ってゆく、しかも傘を差してなどという登山は貴重な初体験である。登山道を少し進むと「白雲山→、東雲湖・天望山↑」と書いた標識があり、間違いなく一周登山ができると自信を持ち右に入る。
東ヌプカウシリと似た雰囲気の露岩の道をジグを切って進む(2)。
25分ほどで
尾根稜線に乗ったらしいが展望は、花はもうほとんどなく、
モイワシャジン(3)、クルマユリ、ヨツバヒヨドリなどが目に付く程度である。本来ならば、然別湖や目指す白雲山の頂上、東ヌプカウシリなどが見えるらしいがガスで全くなし。快適な下り気味の道を進むとまもなく白雲山の頂上斜面と思われる急斜面の前にぶつかる。それを右から巻くように進むと岩石山方面からの道との分岐があり、
やがて巨岩帯へ出る(4)。トムラウシの頂上の感じと似ていて、どこでも登ってもいいらしく、傘を片手に濡れた岩をよじ登るのは結構怖いものがあるが、適当に巻くように登ると
標識の立つ白雲山頂上へ出る(5)。展望はもちろんなし。
10分ほど休み、「天望山→」の標識に従い頂上の下の平坦な岩混じりの露地のところへ下りる。そこから踏み跡がたくさんあって迷うが、適当に下り始める。かなりの急斜面である。
コルの手前で後ろを振り返ると岩石山と白雲山の尖った姿がちょっと晴れたガスの隙間に見える。かなり下ってからでないと天望山の登に着かないらしい。
やがてまっすぐな細いダケカンバと一面柔らかい緑色の笹に覆われた斜面が目の前に立ちふさがるような
コルに下りる。下からの登山道の分岐もあるが、笹藪の中に斜めに続いている踏み跡を登る。両側から濡れた笹が覆い被さり、それを掻き分けながら登るが、足下が見えないので3回ほど転んでしまう。中には笹藪の中に転がり込んでしまうような転倒もあった。傘を持ったままの転倒は誰か見ていたら滑稽なものであろう。
途中分岐があるが、迷わず右へ登って行く。最後に2・3回ジグを切ると
天望山(唇山)頂上へ到着(6)。然別湖側の斜面は庭園風の樹林帯であるが、反対側は笹の斜面とはっきり林層が違うのがおもしろい。展望は全くなし。天を望むなんてもってのほか。
10分ほど休み、さらにそこから反対側に続く道を辿る。唇山だから片方のピークも越えるのかと思ったら気づかないうちにどんどん下がって行く。かなり急なジグを切る道であるが、下の方は
然別湖畔の山独特の苔むした岩と灌木帯がうれしい(7)。
やがて、
眼下にしっとりとした柔らかい笹の緑に包まれた東雲湖が現れる(8)。ナキウサギの生息地らしいがシトシトそぼ降る雨にはナキウサギの鳴き声さえ聞こえない。そこから然別湖畔までの道の周りはイソツツジとガンコウランに覆われている。イソツツジの季節にきたらさぞきれいだろうと思いながら歩いていると、道中初めての人に出会う。黄色の雨具に身を包んだ30歳くらいの男性が一人やってくる。「登山口から50分」だという。
然別湖畔の道へ出る。右手にガスに霞んだ然別湖を眺めながら木の根が入り組んだ道を進む。ハクサンシャクナゲの木がかなり目立つ。花の咲く時期に訪れたいものである。この道は木の枝が道を覆い、これまでの道で傘が一番邪魔な歩きである。傘でそれらの枝を掻き分けながら進むと、
右手に湖越しにホテル群が見え(9)、ゴール間もなくの感がうれしい。
3時間40分で
登山口に戻る。私の車のすぐ後ろでオショロコマ?の釣り大会の計量をしている。そのすぐそばで全身ぐしょぐしょになった衣服を脱ぐのに非常に苦労する。誰もいないのなら外で全部脱いでしまうのだが、女性もいるしそうはいかない。車の中でシートをぬらさないように苦労してようやく着替えてさっぱりする。この後、南ペトウトル岳とも思っていたが、展望のない中をただ歩くのはやはりつまらないのとまた全身ぐしょぐしょになるのがいやで、そのまままだ入ったことのない
山田温泉へ向かう。帰りにまだ登っていない西ヌプカウシリの登山口も確認して南下する。
結局、次の日も雨、その後もしばらく天候が回復しないらしく、次の日は本来なら辿るはずだった日高のエサオマントッタベツ林道とピリカペタン林道の様子を偵察して、2日予定を繰り上げて帰路に就く。