エサオマントッタベツ北東カール(1550m)F〜ルンゼ上稜線(1850m)撤退
<エサオマントッタベツ川> 単独 15,8.3〜4
00,8,10〜11の「エサオマントッタベツ岳」
02,7,27〜28「札内岳〜エサオマン」
04,8,14〜17の「札内JP〜カムエク〜コイカク(主稜線縦走)」
07,8,17〜18の「ナメワッカ分岐撤退」
09,9.20〜22「カムイ岳〜エサオマン(沢縦走)」
11,7,22〜23「北東カール撤退」
ナメワッカ岳を目指したが、北東カールで水を汲んだら、ひとつの水筒に穴が開いていて断念。エサオマンも悪天候で撤退。

8/2 
16:30 エサオマン戸蔦別川林道分岐
           ゲート前(車中泊)
8/3〜4
登り
地点
下山
 4:30
 5:10
 8:15
10:10
ゲート前
入渓地点
997二股
北東カール
11:35
10:55
 8:15
 6:00
[5:40]所要時間[5:35]
11:00
12:15
北東カール
ルンゼ上稜線
13:30
12:45
[1:15]所要時間[0:45]

12:30 新嵐山荘(入浴)
18:00 芽室公園(泊)

GPSトラックログ
○プロローグ
 
 最後の挑戦のつもりで、一度は諦めたナメワッカ岳をねらった。主稜線のナメワッカ分岐からイドンナップ岳に繋がる長大な西尾根の途中に位置する遙かなる山である。登山道はなく、ごく限られた岳人にしか登られていない山だ。沢からの記録もあるが、エサオマントッタベツ川を詰めて、北東カール上の札内JPから主稜線を南下し、ナメワッカ分岐から藪こぎで目指すのがメジャールートである。今回も2泊3日の予定だった。

 実はこの山を目指すのは4回目となる。2007年8月に『ガイドブックにない北海道の山々』の著者・八谷ご夫妻に誘われて、メジャールートから挑戦したが、自分の体調不良と悪天候のために、ナメワッカ分岐で撤退している。2回目は、2009年9月にヤマちゃんをリーダーとする4名で沢から目指したが、計画に無理があったようで、時間切れで断念し、沢縦走のみで終わっている。さらに、11年7月に単独でトライしたが、水筒を忘れるという大ポカをしてエサオマントッタベツ北東カールで撤退している。そのときは、縁がなかったものとして諦めたが、今まで狙った山で諦めた山はないだけに、気にはなっていた。

 ルートは、1日目が、エサオマントッタベツ川を遡り、主稜線をナメワッカ分岐まで。2日目が、強烈な藪こぎで、 ナメワッカ岳までの往復。3日目が下山。いずれも10時間以上の厳しい行動となるはず。特に1日目が鍵である。12時間をみていている。年齢的にも、体力的にも、かなり厳しい挑戦だが、行けるところまで行ってダメなら潔く諦めるつもりだ・・・の決意だった。

○まずは、北東カールを目指す

  前日、4年前は入ることができなかったエサオマン戸蔦別林道分岐ゲートまで車で入ることができた朝になったら車が1台増えていた。(1)エサオマンへ登るという札幌のご夫妻だった。

 4:30、夜露対策で上は雨具を着けて、20kg弱の重いリュックを背負い、満を持してスタート。荒廃した林道跡を進む。10年ほど前までは、分岐からさらに500mほど車で入ることができのだが、今では、背丈を超える笹に覆われている。足元の踏み跡を足がかりに笹を掻き分けながら進む。

 

 5:10、40分で、入渓地点に到着。向かい側にピンクテープが見え、踏み跡も見えている(2)この川を遡行するのは、これで5回目だ。
 この6月には、「日本二百名山ひと筆書き」の田中陽希も、この沢を遡り、カムエクをピストンしている。
 渡渉して、向かい側の河畔の踏み跡を辿る。 その後は、たまにテープに導かれて河畔の踏み跡を歩くことはあるが、ほとんどは、川の中の歩きである。
 初めて使うトレッキングポールは、岩の使い歩きや流れの中のバランス保持に非常に役に立つ。
 やがて、正面にエサオマントッタベツ岳が見えてくる(3)


 入渓して40分、いつも休憩する滝と深い釜のあるところに到着(4)
 900m付近のカーブ地点は、両岸の木が倒れて、川も非常に荒れていた。4年前には記憶にないところを見ると、最近大水か雪崩が発生したのではないかと思われる(5)
 ここで、正面に見えるエサオマン北東カールを見ながら休んでいると、後から出発した札幌のご夫妻が追いついてきた。この後、相前後して登ることになる。


 8:15、札内岳へ突き上げる山スキーの沢との997二股に到着(6)ここからは、右から流れ込む沢を進む。斜度が増し、川の中の岩も大きくなる。
 ときおり、正面に見えるカール壁を眺めながら遡行して行く(7)


 やがて二つの沢が合流する滝下へ到着(8)。巻き道を登って振り返ると、札幌のご夫妻がやってくる(9)この上のナメ滝に人を入れた写真が撮りたいので、先に進んでもらう。



 この沢の一番の核心部である長く急なナメ滝を登る札幌のご夫妻(10)。安全第一で、左岸の縁や踏み跡を慎重に登っていく。

○またもや、ハプニング発生

 10:10、北東カールへ到着。多少ゆっくりペースなこともあったが、4年前よりずっと疲れを感じることなく、体力的にも余裕の状態での到着だった。
 ここでまたもやハプニング発生。前回は忘れて涙を飲んだポリ水筒に水を汲んだら、1.5リットルの方の水筒の折り目のところから細く水が吹き出している。
 4リットルは汲めたが、それでは足りない。おまけに、稜線はすっぽりガスで覆われている。昨夕の段階で、明日以降の天気予報も悪い方に変わっていた。結局ナメワッカは縁がかなったということなのだろう。潔く諦めることにした。
 それでも、エサオマンの下のコルのテン場まで登り、そこからエサオマンだけでも登ろうと思った。

○ルンゼを登ったが、稜線から再び北東カールへ戻り、一夜を明かす


 札幌のご夫妻は、すぐにテントを張り(11)エサオマンをピストンすると言う。こちらは、靴とズボンを履き変えて休憩。
 カール壁のルンゼは、いつも通りの札内岳からの稜線に登る東寄りの安全ルートを狙う。ご夫妻にもそのルートを教え、後からスタート。この6月に「日本二百名山ひと筆書き」の田中陽希も、そのコースを登っているようだ。
 これまでは、テープなどなかったのに、今回はあちこちにテープが付けられていて、非常に分かりやすくなっていた。
 
 途中から振り返ると、尖ったエサオマントッタベツ岳とその下の北東カールが見えた(12)この角度から眺めるエサオマンが一番尖って見える。


  4リットルの水が増えて、20kgを超えたリュックを背負い、急な道を登る。途中にシナノキンバイが咲いていて癒される(13)
 わずか1時間15分で、意外と疲れを感じることなく、札内JP手前の稜線に出た(14)
 しかし、日高山脈主稜線はすべてガスの中になっていた(15)もちろん、先ほどまで見えていたエサオマンも見えなくなっていた。
 ガスの中で一夜を明かすのも嫌なので、ガスが晴れたら前進しようと、30分くらい待ってみた。
 西側からどんどんガスが押し寄せてきているときは、晴れることが少ない。諦めてカールまで戻ることにした。


 下を見たら、雪渓の残るカールと、遡ってきたエサオマントッタベツ川の流れが見えた(16)
 カールまで戻り、テントを張り終えたら、雨まで降ってきた(17)札幌のご夫妻もエサオマンから戻ってきた。こちらは、明日晴れたら、エサオマンを往復するつもりだった。

○一夜を明かし、下山
 
 テントの中で、ウィスキーの水割りを飲みながらのんびり過ごす。雨はすぐに止んでひと安心。
 夕食を終えて、拙筆の連載記事を楽しみに読んでくださっているという札幌のご夫妻と山談義に興じる。
 前夜興奮してあまり眠れなかったこともあり、8時前には眠りに就き、珍しくテントの中でも熟睡できた。


 朝を迎えたが、カールの上はガスで覆われ、下界の方が微かに明るいといった感じだった(18)
 見納めにしようと思った大好きな札内JPからの主稜線の眺めもエサオマンも諦めて、下山の途に就いた。
 ナメ滝の部分は、登りより下りの方が滑って、ずっと怖い。左岸の木の枝などをつかみながら、登りより時間を掛けて慎重に下った(19)

<目に付いた花々〜8月になると花は非常に少なくなる>

カールに一番多く咲いていたチシマフウロ

ナメ滝の岸に咲くホソバトリカブト

ナメ滝の下に咲くミヤマダイコンソウ

 途中で雨が降ってきた。以前に増水して酷い目に遭っているので、急いで下った。下からエサオマンを日帰り往復すると言う二人の男性が登って来た。この人たちも「雨が一番怖いです」と話していた。しかし、997二股まで来ると、雨も止んだので、安心して下山を続けた。

11:30、無事下山。先の下りた札幌のご夫妻の車はすでになかった。芽室町の新嵐山荘で汗を流し、芽室公園で車中泊。

 今回は、それほどの疲れも感じることなく、体力的にも余裕があっただけに、ちょっと悔しさが残った。しかし、1日目は良しとしても、2日目や3日目はかなり厳しいものがあったろう。おまけに天候もずっと良くなかったので、断念して良かったと思っている。


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