エサオマントッタベツ北東カール(1550m)
<エサオマントッタベツ川> 単独 11,7,22〜23

00,8,10〜11の「エサオマントッタベツ岳」
04,8,14〜17の「札内JP〜カムエク〜コイカク(3泊4日)」
07,8,17〜18の「ナメワッカ分岐撤退」

ナメワッカ岳を目指したが、カールで水を汲もうとして、水筒を忘れたことに気づき、ここで1泊しただけで戻る

4:00 新嵐山荘駐車場発
4:45 戸蔦別川林道ゲート
登り
地点
下山
 5:00
 5:45
 7:00
 8:30
 9:30
10:30
ゲート前
入渓地点
823二股
997二股
滝下(1246)
北東カール
10:55
10:05
 8:45 
 7:15
 6:15
 5:30
[5:30]所要時間[5:25]

12:10 新嵐山荘(入浴)
18:00 音更道の駅(泊)
 2泊3日でナメワッカ岳をねらった。主稜線のナメワッカ分岐からイドンナップ岳に繋がる長大な西尾根の途中に位置する遙かなる山である。登山道はなく、ごく限られた岳人にしか登られていない山だ。沢からの記録もあるが、エサオマントッタベツ川を詰めて、北東カール上の札内JPから主稜線を南下し、ナメワッカ分岐から藪こぎで目指すのがメジャールートである。

 実はこの山を目指すのは3回目となる。2007年8月に『ガイドブックにない北海道の山々』の著者・八谷ご夫妻に誘われて、メジャールートから挑戦したが、自分の体調不良と悪天候のために、ナメワッカ分岐で撤退している。2回目は、2009年9月にヤマちゃんをリーダーとする4名で沢から目指したが、計画に無理があったようで、時間切れで断念し、沢縦走のみで終わっている。

 昨秋、ヤマちゃんからメジャールートからの誘いをいただいたが、都合が付かなくて参加できなかった。そのときの記録の「ナメワッカ分岐から藪こぎ往復8時間」から希望をもらって、単独で再挑戦を試みた。しかし、カールまで来て、3日分の水を汲もうとして、水筒を忘れたことに気づき、この北東カールで1泊しただけの山行に終わった・・・・。
○まずは、北東カールを目指す

 戸蔦別林道を進むに連れてガスも取れて、青空が広がる。5:00、今年初の縦走装備を背負い、沢登りスタイルで、2年前?に新しくできたびれい橋の先にある林道ゲートを意気揚々とスタート(1↑)1kmほどの林道歩きで、エサオマン戸蔦別林道分岐から荒廃した林道跡へ入る。林道ゲートができる前までは、林道分岐からさらに500mほど車で入ることができのだが、今は、すっかり荒廃して笹や蕗に覆われて踏み跡しかなくなっている。正面に札内岳が見える(2)

 朝露でずぶ濡れになり、45分で入渓地点に到着。この川を遡るのは4回目だが、もっとも水量が多い(3)これまで持参したことのない登山ステッキが渡渉時のバランス保持に役立つ。

 1日目の行程が一番きついので、ゆっくりペースで進む。今回の計画で一番心配なのは、体力の低下である。晩秋の滝からの転落によるむち打ち症と春の大腸癌手術のために半年近い運動ブランクが怖い。最近は山行の他にジョギングなどで回復に努めてはいるが、体力低下は否めない。それでも、自分のペースで歩けることもあり、1時間ごとに休憩を取りながら順調に進む。

 やがて、青空の下にエサオマントッタベツ岳と北東カールのカール壁が見えてくる(4)。登り下りと何度も歩いている川ではあるが、細かな記憶はほとんどないので、新鮮な感じで歩ける。しかし、滝のような変化のあるところは記憶が蘇る(5)。川の中の縁を進んだり、赤テープを頼りに渡渉したり、巻き道や河畔の踏み跡を辿ったりと3時間半で997二股まで快調に進んだ。997二股からの左沢は札内岳へ続く通称山スキーの沢で、北東カールは右沢へ進む(6)


 この997二股から斜度がきつくなり、ペースが落ちて来る、それまで感じなかったリュックの重さが気になり始める。やがて二つの沢が合流する滝下へ到着し、その上の長く急な滑滝へと続く(7)この沢の一番の核心部なので、細かな記憶が明確に残っている。いつもより水量が多く、水しぶきを上げて流れる落ちる様に緊張感も増す。安全第一で、左岸の縁や踏み跡を慎重に登っていく(8)

 しかし、ここへ来て、過去のこの遡行であまり感じたことがない体力の低下を感じる。「このリュックの重さにさらに5.5gの水の重さが増えたら、果たして・・・?」と心配になる。もう年齢的にも縦走装備での日高山行は厳しくなるだろう。今回が最後になるかも知れないと弱気の芽が顔を出してくる。それだけに今回はなんとしてもナメワッカに届きたいし、ナメワッカ分岐のすぐ先の稜線上に咲くカムイビランジとも再会を果たし、見納めとしたい・・・。

 滑滝を登り切り、やがてカール全体が眼に飛び込んでくる。見慣れた光景だが、びっくりしたのが残雪の多さである。今年はどこの山も雪解けが遅いのは知っていたが、カール底全体が雪で覆われ、カール壁のルンゼにもびっしり雪が詰まっている。札内JPまで上がる一番楽なルンゼも下の方はびっしり雪で覆われている。アイゼンもピッケルも持参していないが、藪を漕いで登れば、何とかなるだろう・・・・(9↓)(テントを張り終えてからの撮影)。



○万事休す〜最大のポカ

 最悪11:00到着の予定だったが、10:30だったので、この後の時間的余裕も十分ある。ここで、靴を沢靴から登山靴に履き替え、3日間の5.5gの水を汲まなくてはならない。ところが、いくら探してもビニール製の3gと1.5gの水筒が見つからない。リュックに入れた記憶はあるのに・・・・。パッキングの際上の方の物を入れ替えしたときに忘れたとしか考えられない。万事休す・・・1gのポリタン1個ではどうにもならない。しかし、不思議に、落胆する気持ちより、なぜかホッとする気持ちの方が強かった・・・登山靴の重さを引いても4kgほど加重された荷物を背負っての苦行にも近いこの後の行程から解放されたという想いからなのだろう・・・・。結局ナメワッカは縁がなかったということだ。現時点では、4回目の挑戦はないだろう。自分のミスとは言え、「無理しなさんな」という思し召しかも知れない。

 さて、この後をどうするか・・・?下山しても十分夕方までには下りることができる。しかし、疲れた体で急ぐことはない。登りでこのカールを経由したのは過去3回あるが、ここで泊まったことは一度もない。ほとんどは主稜線上の札内JPばかりだ。日高縦走装備での日高山行最後の思い出に、独り占めのここに1泊するのも悪くはないだろう・・・・と、とりあえずテントを張り終えても、まだ12:00・・・。1gのポリタンはあるので、札内JPやエサオマントッタベツ岳まではピストンできそうだ。日高主稜線上の眺めやナメワッカの姿も見納めにしようかとも思ったが、何度も登っているし、眼にもしている。緊張感が切れてしまってその気も起きなかった。早速、雪解け水を汲んで焼酎の水割りで喉を潤す。やけ酒のはずが、やけに美味い。


 少し休んで、北側の斜面に咲く花々をカメラに収める。シナノキンバイが、斜面を黄色に斜面を彩る中に(10,11)、アオノツガザクラ(12)、ヨツバシオガマ(13)、ハクサンボウフウ、ハクサンチドリ(14)キンポウゲなどが咲いていた。古い熊の掘り返しはあったが、新しい痕跡はなかった。

 遮る物のない直射日光を受けながら(15)、直ぐ東側の札内岳のピーク(16)雲海の上の東側の伏美岳・妙敷岳や札内岳を眺めながら、のんびりと時の過ぎるのを待つ。このような時間の過ごし方が苦手な自分がちょっと苛立たしい。

 やがて夕方になり、夕食の支度をする。2泊分の食糧があるが、そんなに食えるものではない。重い物を選んで献立を決めて食べ終え、日が陰って涼しくなったころでテントに入る。ラジオで、オールスター野球を聞いている内に眠くなった。夜になると、台風の影響なのか、カール底にもかかわらず強風が吹き荒れて、熟睡できなかった。これが、予定通り稜線上のナメワッカ分岐でテントを張ったら一睡もできなかったのではなかろうか? 


○ 2日目〜下山

 3:30に目が覚めて外に出ると、東側の空が、雲海と上の雲の間にできた直線状の青空が赤く燃えていた(17↓)東向きのカール壁を赤く燃やす日の出ショーを期待したが無理だった。少し明るくなると、雲海の上に手前の双耳峰の妙敷岳がシルエットとなって浮かぶ。その奧に見えるのは北大雪の山だろうか(18↓)

  コーヒーを落として、のんびり朝食を摂る。上空には青空が広がり、今日も天気は良さそうだ。テントを畳み、5:30下山開始。滑滝の部分は慎重に下る。その後は、登りとほぼ同じペースで進み、11:50にゴールイン。土曜日だというのに、誰とも合わなかった。

 しかし、ゲート前には車が3台増えている。全員、戸蔦別川の奥へ向かったようだ。入山届けを見たら、先週一緒に弥五兵衛岳に登った苫小牧のまささんの名前とともに5名と記載されている。そういえば、先週、ganさんが他のメンバーと今週は沢から伏美岳をやると話していたが、沢の名前は聞きそびれていた。結局、ここからスタートして戸蔦別6の沢だったことが判明し、納得・・・。

○ダブルショック!

 とりあえず、汚れを落としに、温泉ではないが260円の入浴料金が魅力の、一昨日に夜を明かした芽室町の国民宿舎新嵐山荘へ向かう。ところが、上美生地区の市街地を抜けたところで、後ろからパトカーが追いかけてきた。横から出てきた軽四トラックに気を取られて一時停止の標識を見落としたらしい。それにしても、道々なのに一時停止の標識があるなんて、考えても見なかった・・・結局反則金7000也。昨日の水筒忘れとのダブルパンチにがっくり!新嵐山荘で風呂上がりの昼食ついでにまたもやけ酒なのに美味しい生ビールを飲んで、車の中でふて寝・・・・・。


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