江良岳(732m)(渡島大島) <山歩集団・青い山脈「渡島大島観察登山会」>  17名 05.6.14

山歩集団・青い山脈初企画の「渡島大島観察登山会」へ飛び入り参加で、思いがけず念願の山へ登ることができました。
23:40 自宅発
1:50 松前町江良南漁港
     (ミーティング他)
3:00 江良南漁港・出港
6:20 トリカラスノ浜・大島漁港
     (ミーティング・朝食)
登山
地点
下山
7:25
9:55
10:15
1045
大島漁港
江良岳
(休憩・昼食)
904小ピーク
12:55
12:05
11:20
10:55
[3:20]所要時間[2:00]
13:20 トリカラスノ浜・大島漁港出港
    (渡島大島外周遊覧)
17:15 松前町江良南漁港着
19:15 帰宅


  松前から60km離れた日本海に深さ1100mの海底から聳える国内最大の無人島渡島大島の最高峰が一等三角点の江良岳である(1)(船上から撮影)。この山名を初めて知ったのは、今から8年前に、山と渓谷社発行の『日本の山1000』を登り歩いている新潟県の男性が「この山だけは個人で登ることができない」とこぼしていたのを聞いたときである。それ以来、自分も諦めてはいたが、機会に恵まれれば、なんとしても登りたい山でもあった。

 渡島大島は、周囲16km活火山の島で、海底火山の上部が海上に頭を出している感じの島である。最終噴火が寛保元年(1741)で、その時の死者が渡島半島西側を中心に1467人という記録が残る。上部は三重式火山を形成し、最高峰の江良岳のほかに清部岳(722m)ともっとも新しい火口を抱いた寛保岳(648m)の3つのピークがある。また、この島は、オオミズナギドリの繁殖地で島全体が天然記念物に指定され、環境庁と文化庁の許可がなければ上陸できない。さらに、許可を得ても、アプローチには松前町沿岸の漁港から高いチャーター料が必要な漁船を利用するしか方法はない。

 このHPの愛読者から「(大千軒岳を中心とした自然保護団体)山歩集団・青い山脈初企画の渡島大島観察登山会がある」という貴重な情報をいただく。まさに、千載一遇のチャンス到来である。この機を逃す手はない、早速、懇意にさせていただいている代表のSi氏へダメモトで図々しくも直接電話を入れる。会員でもないのにご快諾をいただき、天にも昇る気持ちで参加する。

 集合時間が夜中の2:30とのことで、夕食後直ぐに布団に入り、5時間ほど仮眠を取り、0時前に家を出る。集合場所の松前町江良漁港を目指すが、道中ずっと雨が降っている。天気予報の「曇りのち晴れ」を信じて漁港に到着するが、出港時にはすでに雨が上がっていた。

 参加者は平日に延期になったこともあり、23名から私を新しく加えても17名に減っていた。暗い中で顔合わせやミーティングをするが、リーダー・講師陣は、これまでこの島に調査等で何度か上陸したことのある青い山脈代表のSi氏の他に道南の野鳥研究と植物研究の第一人者であるHa氏とI氏の3人で、あとの14人は初経験とのことである。中に道南の登山界を代表するYo氏や「ときどきHPを拝見しています」と挨拶してくださる方もいて心強い。このために購入した酔い止め薬を飲んで、寒さ対策も兼ねて上下雨具に身を包み船に乗り込み、舳先の甲板に陣取る。

 3:00、出港。幸い雨も上がり、波も穏やかであるが、夜明け前の甲板の上は寒い。リュックの中に入れたまま購入以来広げることすらなかったツェルトを出して身を包む。近づくに連れて、島の東側半分が見えてくるが、どこを登るのだろうと思うほどの急斜面ばかりである。3時間20分を要して、唯一漁船が着岸可能なトリカラスノ浜に建設された避難港の大島漁港に到着する(2)そこには、その漁港の建設・補修工事関係者が利用する立派な飯場が建っている。

 上陸し、改めてミーティングをする(3)登山をするのは、海岸で野鳥調査をするHa氏ほか3名以外の13名である。朝食後、準備運動をして、いよいよ登山を開始する。海抜0mからの登山も珍しい体験である。飯場の階段を上り、その右後ろの急斜面を、植物をなるべく踏まないように気をつけながら登る。

 Si氏やI氏から植物の説明をいただきながら登っていくが、一番先に目に飛び込んできたのは、一面に咲いている初めて目にしたホタルカズラの花である。開き始めの薄い赤紫色や開花後の淡い瑠璃色の花びらや中の白い線が鮮やかである(4)このほかに小さな白い花を付けたオオヤマフスマ、まだ花を付けていないキリンソウ、外来種のアメリカオニアザミ、種を付けたマイズルソウなどが眼に付く。この島には、放されたイエウサギと船から逃げたドブネズミ(コンクリートブロック大)が全島に繁殖しているらしく、その穴と思われるものも多い。

 標高300mを越えると、火山礫の露出斜面が多くなり(5)タヌキラン(カヤツリグサ)、ツルキジムシロ、エゾスカシユリ、ミヤマオダマキの花の他に、アマニュウ、エゾニュウ、ムラサキモメンズル、タチツボスミレ、ミヤマダイモンジソウ、ヤマブキショウマなどが眼に付くようになる。

 標高600m付近で傾斜が緩んで顕著な尾根に乗るが、頂上近くになると、その北斜面一面を覆うのがこれまで見たことのないミヤマオダマキの大群生である。これには、全員歓声を上げる(6)
 予定通り、10時に一等三角点(点名・大島)の埋設されている頂上へ到着する。頂上付近はミヤマオダマキの他にツルキジムシロや珍しいそのものずばりのスミレ、エゾタンポポ、マイヅルソウなどが咲き誇っている(7)南斜面は荒々しい崩壊地形となっている。上空は晴れ間が覗いているが、周りはガスで覆われていて、展望がないのが残念である。

 一等三角点ピークの西側の稜線の先の方が高そうに見えるのでそちらへ進むが、実際には同じ高さのようであった。そこで20分ほど休憩し、ガスで覆われて姿が見えない清部岳を目指して急な尾根を下る。下り初めても北斜面は相変わらずミヤマオダマキの大群生が続く。
 

 下り始めてまもなくして、南斜面から吹き上げた強風で地表がめくれ上がって飛ばされている地点を発見する。これほどの強風は、多分昨年、北海道中を倒木の山ににした台風18号の仕業に違いない(8)

 そこからどんどん稜線を下っていくが、南側は崩壊地形で、北側の草付き斜面が雪庇のようにせり出し、それがどんどん削れ落ちているようである(9)

 そんな光景を楽しみながら下っていくと、先に岩峰が見えてくるここは地図上に記されている606ピークの手前の小ピークのようである。

 その岩場の小ピークまで進むが、本来であれば、コル越しに見えるはずの清部岳もガスで見えず、さらに、その先の寛保岳は清部岳に登らなければ見えないということもあり、植生の変化もないし、時間的余裕もないので、後ろ髪を引かれる思いでそこから引き返すことにする。戻る寸前に一瞬であるが、稜線続きの606ピークが姿を現す。そこから北側に続く稜線上の清部岳は戻る最中にこれも一瞬だけ姿を見せただけである。

  江良岳の頂上まで戻って昼食タイムとする(10)45分ほど休み、下山を開始する。急な登りは下りも速い。上の方は火山礫のザレ場を滑るように下り(11)下の方も海面へまっすぐ転げ落ちるような感じで、花を愛でながら2時間半要して登った斜面を55分で下ってしまう。

 海岸で野鳥の調査をしていた4名と合流し、船に乗り込む。船長さんのご好意で島の周りを一周して下さるとのことである。次々現れる荒々しい手つかずの自然の景観に感嘆の声を上げながら見とれる1時間であった。その後、まっすぐ江良漁港を目指す。

 
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