大千軒岳 (1,071m)
 
[知内川コース] 1回目 1996、7、7  2回目 1996、8、25(略)

25年前の記憶を辿り、ガスの中、ややピークを過ぎた稜線の花を見に行く

4:00 自宅発(函館)
登山 地  点下山
6:15
7:00
7:45
8:50
9:20
登山口
広い川原
金山番所
お花畑稜線
頂上
12:45
11:50
11:15
10:20
9:50
[3:05]所要時間[2:55]

13:30 知内温泉(入浴)
15:30 帰宅
知内町市街からの大千軒岳
 
 最近天候に恵まれず、ひと月近く登れなイライラが募る。4年前新道コースから登って感激した花畑だけでも見てこようと思い、25年前に職場の同僚と歩いた知内川コースを辿ってみることにし、低い雲の下、津軽海峡を左に見ながら車を走らせる。国道の知内川の橋の上から、これから向う千軒の山々がくっきりとした姿が望まれる(1)

 一面ガスに覆われた登山口に到着して準備をしているうちに、車が6台13人が到着。記帳しようとして、花のワルツ(浅地達夫氏画)2日前のところに知人の名前があり、「ガンバリ岩付近でクマの糞を発見。視界も利かないので、勇気ある撤退をしてきた。」と記入されている。自分の記入しようとする上の欄には、先に入っている知人M氏一行の名前もある。これまで北海道内の山をかなり登ってきているが、地元の山ではこんな出会いもあるものだと妙に納得して出発する。

 まず、25年前に記憶にはなかった苦手な釣り橋をおっかなびっくり渡り、続いた雨のせいで、水量の多いであろう川沿いの右岸を進む。高巻きやきついアップダウン、枝沢を徒渉したり、岩に掴まったり、崩れた川岸を歩いたりと、道南特有のブナとサワグルミの巨木の目立つ結構変化に富んだコースを楽しみながら進む。入山してまもなく、ピンクのラン系の見たことのない花が目につく。(帰り、同行したグループのメンバ-からサイハイランだということを教えていただく)

 前回キャンプした「広い川原」であるが、一面まったく氾濫原状態で、草も生えていないのにびっくりする。今年は長雨が多く、最近洪水状態の流れがあったのであろう。川原から再び登山道に入る手前の新しい丸太橋を渡り、左岸の道を進む。相変わらずガスの中状態で、視界は限られている。大きく川が直角にカーブするところで、岩に抱きついて進むか、高巻きを巻くか迷うようなところで、3人連れがうろうろしている。結局、自分が先頭になって、大きな岩に抱きつきながら、川の中の岩を伝いながら渡りきる。
隠れキリシタン殉教の地「金山番所」
 やがて、江戸時代に隠れキリシタンが106名も処刑されたという白い十字架の立つ「金山番所」へ到着(2)。その後、視界の利かないだけに荒々しさが目立つ灯明の沢と銀山の沢を越えると、「千軒銀座」である。そこから、この山の一番きついジグを切る急登となる。少し登って休憩する。この急登は、25年前の記憶にもはっきり残っているから、かなりきつい登りだったのであろう。周りはガスに覆われ、木の葉からぽたぽた落ちる滴の音、小鳥のさえずり。下から聞こえてくる沢の音・・・・しばし、山の静寂を楽しむ。

 「休み台」を通過するころ、前を行くM氏一行のものと思われる鈴の音が聞こえてくる。わずか15分しか先に出ていなのにずいぶんと速いペースである。追いつき、一番後ろを歩いているM氏に声を掛ける。4年前に砂原岳で会って以来の再会である。奥さんとあと年配の男女二人の4人連れである。
真新しいクマの足跡
 追い越してまもなく、「ガンバレ岩」の下で、真新しいクマの足跡を見つける。前足の爪の痕や大きな後ろ足全体の足跡がまだ誰も通っていない道にくっきりとついている。多分、今朝方のものに違いない(3)。しばらく行くと、今度は古い糞が道の真ん中におちている。これが、入山届けに書かれていた糞なのであろう。笛を思いっきり吹きながら先に進む。

 やがて、傾斜が緩くなり、チシマフウロが目立つ草原に出る。視界はほとんど利かないが、花畑が広がる稜線は近いはずである。ぬれた草が道に覆い被さっているので、雨具の下だけをつけて進むと、ボーッと白い十字架がガスの中に姿を現す。

 花畑が広がる稜線の道をややピークの過ぎた感のする花々を楽しみながら、見えない頂上へ向かう。4年前に新道コースから登ったときより、やや咲いている花の種類が少ないような気がする。ミヤマアズマギク(4)とチシマキンレイカは花びらが散り始めている。それでも、ガスの中にオレンジ色を際立たせているエゾカンゾウのほか、カラマツソウ、ムカゴトラノオ、ハクサンボウフウ、ギョウジャニンキク、湿気の多いところにはミヤマキンポウゲが目立つ。

 いつも来るたびに、「こんな尖った頂上のすぐ真下なのに、どうして湧き出るのだろう」と不思議に思う「千軒清水」に寄り、喉を潤し、ポリタンに水を汲む。
お花畑のアズマギク
 頂上に到着すると、タイミングよく上空が晴れて太陽が顔を出す。まもなく到着したM氏一行が到着。写真を撮り合ったり、山の話をしながら上空の晴れ間が広がることを期待しながら休憩。時折、突然正面に前千軒がガスの切れ間から顔を出す以外、展望は広がらず。また、以前なかった「一等三角点開始百年記念碑」が設置されていた。読むと、北海道最古の三角点ということである。この山の歴史には、キリシタン殉教のほかにも、このようなこともあったのかと感動する。

 30分ほど休み、晴れそうにもないので、下山開始する。帰り晴れていたら休もうと思っていた花畑の稜線は一面ガスの中である。白い十字架の分岐のところでは、短パンとTシャツだけで寒そうな外国人も交えた15人くらいのグループが休んでいた。「頂上の方が晴れていて、暖かいですよ。」と、声を掛けて別れる。下山途中、かなりの人達が登ってくるのに出会う。一番花のピークの6月下旬はほとんど雨だったので、この天候でも、山の好きな人達はやってくるのであろう。

 登りで見つけたクマの足跡は、みごとにたくさんの登山者の靴で消されていた。「にせ銀座」を過ぎたあたりで、登りでは気づかなかったが、妙に頭上が明るいところ差し掛かる。なぜだろうと見渡す、辺り一面の樹木が2mくらいの高さのところでほとんど薙ぎ倒されたように、沢地形の下の方に向かって、折れ曲がっている。かなり強烈な突風が吹いたのであろうか?自然の力のすざましさを実感する。
道内では、この山だけのハクサンシャジン
 途中、花を観察したり、フキを採ったり、残りの昼食を食べたりしながら、のんびりと下山する。帰りは、開湯800年という北海道で一番古いのではないかと思われる知内温泉で汗を流し、近くの手打ちそばやでそばを食べて、霧雨の中、帰路に就く。

この年の8月25日低気圧通過後のさわやかな秋晴れの天候に誘われて、同じコースを再訪する。
花畑には、全然違う花が咲いている。北海道ではこの山でしか目にすることのできないハクサンシャジン(6)の紫色と、コガネギクの黄色が一面に広がっている。よく見ると、トウゲブキ、エゾノホソバトリカブト、ミヤマダイモンジソウ、エゾシオガマ、ウメバチソウなども咲いていた。
 頂上からの展望は、まさに秋晴れの360度の大展望が広がる。津軽海峡を越えて岩木山、北は羊蹄山までくっきりと見えていた。
帰りはせっかくのチャンスなので、上ノ国の石崎へ抜けて江差経由で帰宅の途に就く。

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