中天狗(1316.8m)
<尻岸馬内川〜北東面直登沢> 単独 11,6、23
標高差300mの急な雪渓を詰めて、夕張山地の奥深い秘峰に立つ

3:45 尻岸馬内林道ゲート
登山地 点
下山
5:15
6:10
8:05
林道終点(入渓)
直登沢出合い
頂 上
10:20
 9:35
 8:30
[2:50]所要時間[1:50]

12:00 林道ゲート
12:30 ハイランドふらの(入浴)
18:00 旭川道の駅(泊)

  夕張山地の北西部に位置する鋭峰で「ちゅうてんぐ」と読むらしい。岳も山も付かない珍しい山名だが、ちなみに三角点名も同名である。布部岳と崕山を結ぶライン上のほぼ中間に位置し、人里からはもちろん、あまり人目に触れることのない奥深い秘峰である。

 この山を意識したのは、昨年の春に山スキーで登った松籟山の頂上からから極楽平の上に頭を出したこの山を目にしたときだった(1)山行記録もいくつかあり、富良野市と芦別市の境界となっている尻岸馬内川からの北東面直登沢がルート。マニアックな山ヤには知られた存在のようだ。ちょっと冒険だが、単独でもやれそうと温めていた山でもあった。

 この時期はその沢に雪渓がびっしりと詰まっていて、それを利用できるとのこと。また、西隣の崕山と同じような地質なので、特異な花が見られるかも知れないという淡い期待もあったので、この花の時期に挑戦することにした。

 沢歩きと急な雪渓登りに備えて、スパイク長靴にピッケルにヘルメットの出で立ちで、足には長靴に水が入ってもいいように沢用のネオプレーンの靴下。

天気予報から午前勝負と、3:45、尻岸馬内林道ゲートをスタート。林道終点まで6km弱の歩きの末に本流に入渓。沢岸には微かな踏み跡も認められる。

 何度も渡渉を繰り返すが、幸い長靴に水が入る深さではなかった。入渓してまもなく、わずかな空間から目指す頂上が見えている・・・なんとか天候は持ちそうな気配だ(2)。雪崩れ跡のデブリが沢を覆っている箇所もある(3)

 1時間弱で北面直登沢出会いの到着。両側に門柱のような岩崖が切り立って、その中に入っていく単独の身には、凄みさえ感じる光景だ(4↓)

 いよいよ突入する北面直登沢は、標高差約600mのほぼ一定の急斜度が最後まで続く一本沢だ。


 徐々に斜度が急になり、小滝状の流れの中を登っていくが、出会いから標高差50mほどのところで、突然、その上の水流が姿を消している。その上まで登っていくと、なんと、結構な水量が岸の下から噴き出すように湧き出ている(5↑)。そして、その上は、土石の詰まった涸れ沢になっていた(6↓)


 標高800m辺りから切れ切れに雪渓が現れる、やがて、850mからは切れることのない雪渓歩きとなる。それが1150mまで続いていた。標高差300mの沢に詰まった雪渓歩きは、初めての経験だ。北アルプスで針ノ木雪渓を上り下りしたことはあるが、斜度が緩く、幅も広いので怖さを感じることはなかった。しかし、ここの斜度は、写真で見るとそうでもなさそうだが、40度ほどもあろうか?まっすぐな沢なので滑落したら止まらない。下を向くのも怖い。ピッケルなしではとても登り下りできないが、一度も練習もしたことのない滑落停止の方法をイメージしながら慎重に登る。(7)。 途中で振り返るたびに、沢を挟んで見える982の尖峰がどんどん低くなる(8)

1100からは雪渓の詰まった沢が細く急になる。しかし、沢岸に草付き斜面が出てきて、踏み跡らしいものも出てきたので、滑落の心配のない踏み跡を辿るようにした。

 1150からは沢型が消え、雪渓も消える。頂上までは周りの灌木とピッケル頼みの急な登りが続く(9)。頂上が近くなると、更に急になってくる。這うようにして登って手を伸ばしたところに熊の糞・・・。

 頂上直下は、一面咲き始めたばかりの今年初めて目にしたシナノキンバイの大群落を中心に、シラネアオイ、コバイケイソウ、ハクサンチドリなどの花畑が広がっていた(10)
 


 三等三角点の設置された頂上は意外と広く、鹿や人による踏みみ跡が広がっていた。一番先に目に飛び込んできたのは、鋭く尖った夕張中岳、その手前に小天狗と呼ばれ2つのピーク。その左奥の芦別岳は尖った頂上は雲の中だったが、北尾根と夫婦岩は見えていた(11)しかし、その左側に昨年の春に登った御茶々岳は見えていたが、この山を眺めた松籟山や極楽平や布部岳は雲の中。西側の直ぐ隣には恐竜の背骨のような崕山(12)・・・それらの展望をおかずに手作りおにぎりの朝食。

 頂上斜面は概ねようやく咲き始めたばかりのシナノキンバイの大群落に覆われていた。あと1週間もすれば、一面真っ黄色な壮大な眺めになるだろう(13)この山は、西隣の崕山と同じような地質らしいので、特異な花が見られるかも知れないという淡い期待もあったが、それらしい花は見当たらなかった・・・その気になって懸命に探したわけではないが・・・・。

 まもなくガスが広がって来て視界が限られてきたので下山開始。上の草付き斜面も雪渓もピッケル頼りで慎重に下る。雪渓は左側の縁を下るようにした。左手で笹や灌木が掴め、右手のピッケルが雪に刺さるからだ。こんなにピッケルを駆使した登山は初めてだった。

 登りの半分の時間で、命の心配がなくなった本流に出たら一気に緊張が解けた。はっきり言って、単独では厳しいかも知れないと思っていた1ピークを手に入れて大満足!昨日と同じハイランドふらのの温泉で汚れを落とし、生ビールで祝杯を挙げた。

 


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