○稜線上を美比内山を目指す 

 今度は、千尺高地まで戻り、稜線上を美比内山を目指す。雪庇の張り出した向こうにこれから進む千尺高地〜111.6ピーク〜1050ポコを越えて尖った美比内山が見える(1)。
 
 稜線上は「雪が締まって非常に歩きやすい。ちょうど30分で千尺高地に戻るが、その途中で無意根山まで行くという単独行の私より年輩の男性に出会う。
 
 千尺高地を越えて滑り降り、1111ポコを越えると右手下に豊羽鉱山の建物群が見える(2)。次のピークが三角点のある1111.6ピークである。その右側の尾根は学校尾根と呼ばれ、滑りを楽しめる人気の尾根のようである。天候の悪いときはエスケープルートとして考えていたが、だんだん快晴状態になってくる今日はその心配はない。
 千尺高地から25分で1111.6ピークに到着する。風もだんだんなくなり、気温も上がってくるので、非常に気持ちがよい。ここで初めてリュックを置き、腰を下ろして一休みする。振り返ると越えてきた稜線越しに長尾山も見えている(3)。この辺りから雲で覆われていた羊蹄山もその端正な姿を現すようになる(4)。

 10分ほど休憩し、さらに1050ポコの向こう員見える美比内山を目指して、コルまでの標高差120mほど滑り降りる。上空はすっかり晴れ渡り、まさに春の日射しとなってくる。コル付近のダケカンバ林もその向こうに見える羊蹄山も独り占めの贅沢である(5)。この時期にこれほどの好天は珍しいくらいである。

小さな1000mポコを越えて、次の1050ポコは東側を巻くことにするが、陽光をもろに浴びる南斜面でもあり、気温も上がってきて、雪が重たくなってくる。おまけにシールに雪が付いて団子状になり、疲れた足に拷問状態である。スキーを外して慌ててシールワックスを塗ってみたが、後の祭りである。

 そうこうしているうちに左に見えるはずの美比内山が右に見える。どうやら南西に張り出した尾根を稜線と勘違いして、90度別方向に向かって進んでいるらしい。慌てて地図とGPSで確認して間違いに気付き、軌道修正をし、重い団子シールを引きづりながら稜線上へ戻る。


最後のアプローチは意外に複雑な地形で、雪庇の切れ間を下りなければならないところもあったりで、すんなりと頂上へ登らせてくれない。12:00までに到着したかったが、予定より15分ほどオーバーして、ようやく樹氷に覆われたアカエゾマツの生える頂上へ立つことができた(6)。

 
すっきりとした春を思わせる青空の下に360度の展望が広がる。北側には余市岳〜白井岳〜定山渓天狗岳(7)、東側には無意根山から続くこれまでずっと辿ってきた稜線が見える(8)。南側には羊蹄山やニセコ連峰の山々・・・・。 シールを外して、これから下りる尾根を雪庇の上から眺める。下り立った平坦な地形とその先に広い緩やかな尾根が見えている(9)。1111.6ピークからこの頂上をピストンしたらしいトレースは途中で確認できたが、下から登ってきているトレースやシュプールは全然見当たらない。

○広い尾根を豊羽鉱山跡への下山
 
 頂上は少し風があるので、下の樹林帯へ下りてから昼食タイムにしようと考え下り口を探す。頂上のすぐ北東側に雪庇のないところがあり、すんなりと下り雪庇の下に出ることができた。右側に雪庇が雪崩れた跡があるが、ここから下の平坦な地形までの標高差100mほどの急斜面が唯一滑りを楽しめるところである。北斜面でもあり、まだ、雪が重くなっていないので気持ちよいシュプールを刻むことができた(10)。雪庇の発達した頂上を見上げることのできる980m付近まで下りて、昼食タイムにする(11)。


 その後の広い平坦な斜面はどこが尾根の中心かよく分からないが、よく見ると左右から小さな沢地形が入り組んでいるので、その真ん中を進む。それでもときどきGPSで確認して軌道修正する必要がある。トレースは一切見当たらないが、ところどころにピンクテープがぶら下がっているのも心強い。下りのはずなのに、ほとんどがラッセルの必要な歩きが続く。

 880m付近で大江の沢川の方へ延びる尾根へ間違って進み、源頭を巻くように登り返したりしながら豊羽鉱山の一番大きな工場の右手に続く尾根を下る。尾根の末端はどこも急斜面であるが、なんとか道路の上まで下りることができた。しかし、最後の難関は垂直に切り立った2mほどの除雪壁の上である。スキーを外し、ストックと一緒に下に落とし、雪壁の上から雪庇を崩しながら滑り降りた。

 ちょうどどこへ通りかかった工場の関係者に車をデポした無意根山荘までの道路を教えてもらい、スキーを担いで20分ほど歩き、7時間15分にわたる山旅を終える。今シーズン初めての本格的な山スキー登山であったが、好天に恵まれて、単独行でも全く不安感のない山行に大満足で帰路に就く。

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