第一稜を巻いて頂上直下へ直登、そして頂上へ稜線を目指して雪を踏む
 いよいよ、第一稜の根元を巻くことになる。ザイルを担いでヘルメット姿で第一稜に取り付いているグループもいる。右手の北尾根の稜線も近くに見えるようになってくる。ここからはさらに傾斜が増して来る。左手に荒々しく延びる第一稜と頂上岩峰の斜面を見ながら、一歩一歩登る。高所恐怖症の自分は下を向くのが怖い。ふと、気分をスキーモードに変えてみる。「先日、スキーで気分良く滑り降りたアンヌプリの北壁だって、このくらいあったよな。」と思ったら、急に怖さが無くなったが、周りを囲んでいる岩壁の迫力には負けそうな気持ちになる。Kさんはへっぴり腰になり、「かえって危ないよ。」と、Sさんに下から声を掛けられている。O女史は、全然怖がる様子も無く淡々と登って行く。

  頂上岩峰の根元の稜線が見えてきても、なかなか届かない(1)。11時20分ごろ、Nさんから「新道グループ、頂上到着」の携帯電話が入る。まもなく頂上岩峰の根元に到着。雪がなくなるところで、OさんとO女史がビニールの袋に雪を詰めている。ワインや缶ビールを中に入れて冷やすとのこと。先程の牛乳パックといい、いろいろな知恵があるものだと感心する。
チー太郎さん、Sさんと私
  2年前は、花畑だったところもまだ雪の下である。北海道ではこの山でしか見られないツクモグサが岩影に咲いていたが、今回は、その芽生えも見ることができなかった。広い雪の稜線に北尾根を下るグループの足跡が一直線に続いている。

  いよいよ、頂上岩峰を攀登る感じで踏み跡を辿り、11時45分、スタートして6時間05分、3度目の頂上に立つ零れ落ちるのではと思うほどの凄い人数が所狭しと群がっている感じである。ちょうど登り着いたところに先に到着した新道グループが陣取っていてくれて、すんなりと固まることができた。スタートで別れたチー太郎さんとも感激の再会である。3ケ月前、彼女との初対面のとき居酒屋で顔を合わせた3人で写真に収まる(2)。
ポントナシベツ岳と夕張岳
  お湯を沸かし、昼食にする。あちこちからいろいろな食べ物が回ってくる。ワインも缶ビールも回ってくる。とくに、ビールのこの一口だけのおいしさは何ものにも替えがたい最高の価値がある。これが、グループ登山の楽しさでもあろう。
 
 1時間少々休んだが、登りの6時間もそうであるが、グループで行動すると、その時間の長さが全然気にならず、あっという間に過ぎてしますような気がする。いよいよ全員で新道コースの下山である。 ポントナシベツ岳の向こうに見える夕張岳(3)、富良野盆地とその向こうに連なる十勝連峰と大雪の山々、そして、極め付けは今日の登ってきた本谷コースを見下ろし、その下から鋭峰まで凄い迫力で突き上げる夫婦岩の下のXルンゼなどをカメラに収めて出発である(4)。
はるか下の本谷を見下ろす
新道コースを下る
  見晴台までずうっと雪だそうである。頂上直下の急斜面は、滑り下りる感じであっという間に雲峰山とのコルまで下る(5)。雲峰山で休んでいるとスキーとボードを担ぎあげていった連中が第一稜と第二稜の間の急なルンゼの斜面を滑り下りて行くのが見える。見ている人から歓声が上がる。辛い思いをしてここまで担ぎ上げた者にしか味わえない最高のエクスタシーの中で滑っているに違いない。心から拍手を送ろう。

  雲峰山から熊の沼までの斜面は広い大斜面である。みんないつのまにか米袋や肥料袋を手にしている。もちろん尻滑り用である。こちらは何もないので、立ち滑りをしながら下るがスピードが違う。みんな完全に子供に戻っている。「山に登って子供に戻る」こんな瞬間が大好きである。思わずこちらもリュックの中からサミット袋を出して滑ってみる(6)。とくに他人の滑ったお尻の跡はボブスレー感覚の滑走が楽しめる。「だれのお尻の跡が一番滑るだろうか?」などという会話も楽しい。
頂上下の急斜面を滑りながら下る
 半面山から鶯谷までもほとんど雪の上である。ほとんど立ち滑りをしながら時には露出した夏道をのんびり下る。見晴台を過ぎた辺りからはようやく雪がなくなり、夏道となる。 もうすこしで登山口というごく平らなところで、何かの拍子で左足の甲がくるぶしの下で反転し、ゴキッ!という音がして劇痛が走る。よくやる捻挫のパターンである。直ぐ痛みは引いたが、登山靴で押さえられているので、それほど気にもせずゴールする。しかし、靴を脱いでみたら、腫れも出ているし、捻ると痛みも走る。エアーサロンパスを借りて塗り、湿布を貰い後に備える。

ゴール、そして
 スタートしてから11時間40分後、新道コース登山口到着。ゆったりペースと楽しいふれあいのお陰で、それ程疲れも感じず、一人で登っていたら、緊張感とあの本谷の迫力との孤独の戦いで精神的にもかなりきつかったはずである。本来感ずるはずのそんな辛さもこの温かい仲間のお陰で楽しい柔らかな印象として残ってしまった。

   ゴール地点の川の中に冷やしておいたTさん夫婦心尽くしのスイカが登場する。この時期まだ高いであろうにとは貧乏性の心配か? 早速ご馳走になる。旨い! みなさんにお礼を言い、わざわざ反省会の席を設けていただいたTさん夫婦とSさんと焼き肉やさんで再会を約束し、私は汗を流しにハイランド富良野の温泉へ向かう。

  Sさんのお子さんを加えた5人での反省会はおいしい本格的な焼き肉と生ビールがどんどん染み込むように腹に入っていく。成し遂げた満足感、達成感が山の良さである。気分は当然ハイになり、この上ない幸福感を味わうひとときとなる。その後、手打ちそば屋も案内していただく。ごちそうさまでした。

 その後、駅前の駐車場の新ホテル・ホンダCRVで、8時間も爆睡することとなる。

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