[8]  芦別岳 (1727m)
2回目 「新道コース〜旧道コース」
                   1回目 「新道コースピストン」    


3回目 「本谷コース〜新道コース」  1999、5、23(日)

荒々しく険しい岩壁に囲まれた深い渓谷のに詰まった残雪の上を頂上直下まで溯り、3度目の頂上に立つ。
登山(本谷コース)
 5:40
 7:20
 7:40
 8:00
 8:45
11:45
旧道・林道終点登山口
ユーフレ分岐
ユーフレ小屋前着
〃 発
ゴルジュ通過
頂上着
[6:05]所要時間
下山(新道コース)
12:50
13:25
15:10
16:20
頂上発
雲峰山
見晴台
新道登山口
[3:30]所要時間

 天を突く「北海道の槍」、いくつもの鋭い岩峰をピークに幾重にも続く鋭いギザギザの岩稜群とルンゼ群などの荒々しさが魅力の山である。この魅力が好きで、遠く離れているが、すでに2度頂上に立っている。「今度頂上に立つときは、絶対本谷コースから」と決めて2年、一人歩きのこだわりを捨て、いろいろな縁で懇意にしていただいている富良野市役所の「山歩くらぶ」のメンバーのお陰で、ついに、その槍を真下から眺めながら、両側から凄い迫力で迫る岩壁に囲まれた深い渓谷に詰まった残雪の急斜面を詰め、3度目の槍のてっぺんに立つことができた。

  前日、樺戸山地の「浦臼岳〜隈根尻山」で足慣らしをし、暗くなる頃、芦別岳の登山口の近くに住む「山歩くらぶ」の事務局長で、最近メール交換でお付き合いをいただいていいるTさん宅へご挨拶方々ピッケルを借りるために寄る。Tさん宅への宿泊の勧めをお断わりし、登山口で車中泊。

懐かしい再会、集合、そして旧道を朝日を受けて、いざ出発!
  朝、準備しているところへ、3年前、お互い一人歩きのウペペサンケ山で途中から同行して以来お付き合いをいただいているSさんが到着。懐かしく挨拶を交わす。くらぶ内では雨男で有名な彼の面目丸潰れのドピーカンの天候に心躍る。 そこへ、くらぶの面々が集合してくる。もう一人ぜひ逢いたかった私の最高のメールフレンドで、私のHP誕生の最高の支援者「オマケのチー太郎」ことCさんとも、照れ臭い初対面以来3ケ月ぶりの再会である。ついに彼女と同じ山に登ることができるうれしさにこれまた心躍る。(同行メンバーの詳しい紹介は「気まぐれ日記」を!)

  全員集合して記念写真(1)。チー太郎さんを含む新道コースを登る3名と頂上での再会を約し、本谷コースを登る6名はSさんの車に乗り込み、旧道の林道終点まで走る。すでに10台くらいの車が所狭しと置かれている。
 夫婦沢合流地点の丸木橋
  5時40分、Tさんを先頭に、女性のKさんとOさん、私、Sさん、Oさんの順で、2年前以来2度目となる懐かしいユーフレ川左岸の旧道に取り付く。二つの大きな高巻きを越え、1時間程歩いた所で、右のルンゼから流れ落ちる滝を眺めながら最初の休憩。

  夫婦沢が滝になって合流する上に倒れ架かっているトドマツの丸太橋を渡ることになる(2)。高所恐怖症の私には辛い場面である。後ろからSさんが「ガニ股で歩くといいですよ。」と声を掛けていただく。確かに180 °近く思いっきり開くと怖くない。こんな知恵もグループ登山ならではの勉強である。ところが、その丸太を渡り終わったところで、それまで一人だけ疫病神がついているのではと思われるくらい転んだり、木の枝を足に刺したり、残雪の踏み抜きで躓いたりと小さな災難を連発をしてきた一番若いKさんが、ギャーッと声を上げたきり動けないでいる。滑り落ちて丸太を挟んだ座った状態で腿の後ろに枝が刺さったとのことである。男性は側を離れてOさんに見てもらったら、刺傷ではなく擦り傷とのことで胸を撫でおろす。薬を塗ってもらってスタートする。そのあとも、岩に肩をぶつけたりと一人だけ満身創痍の傷だらけの女のKさんである。

いよいよ心踊る本谷コースへ芦別岳頂上をバックにユーフレ小屋の前に立つ
  轟音を立てて物凄い勢いで流れ落ちる白竜の滝の上でユーフレ分岐となる。本流沿いに私にとっては初めての道を進む。わずか行くと、目の前に壁が石を積み上げたような感じの風格のあるユーフレ小屋が現れ、その向こうに大きな黒い岩の塊のように鋭く聳える芦別岳が目に飛び込んでくる。最高のロケーションである(3)。

  そこでお湯を沸かし、コーヒーを飲んで20分程休憩である。このおおらかさは自分のこれまでの一人歩きでは味わえないよさである。そうこうしているうちに、次から次と信じられないほどの人数がやってくる。毎年登る彼等もこんな人数は初めてだそうである。みんな本格的な山屋さんスタイルで、プラスチックシューズやザイルやヘルメットスタイルの人もいる。女性はわがチームの二人だけである。
ゴルュジュ手前で、
  いよいよ、川岸の踏み跡や雪渓を踏んで行くが、高巻きか川岸かと悩むような所で、前を歩いている人達が渋滞している。女性を含む前の3人は高巻きを私から後ろは岩に抱き着きながら川岸を越える。高巻きをした3人の中でKさんだけが下りてこない。また?と心配したがギョウジャニンクを採っているとのこと。ところが、彼女を待っているとき左手の狭く急なルンゼの上部からブロック雪崩が発生し、物凄い音を立てて直径1mはあろうかという大きな雪の塊が何個も飛ぶように転げ落ちてきた。タイミング良くそこを通っている人はいなかったが、もしKさんが順調に下りてきていたら、私たちが巻き込まれていたかもしれない。ギョウジャニンニクが彼女の疫病神を追い払ってくれたのかもしれない。

  その辺りから、完全に雪渓歩きとなる。雪面から2mほどの高さで幹が折れている木があちこちに立っているところがある。それは、雪がその高さのときに雪崩があった証拠だそうである。これも新しい知識である。その辺でピッケルを用意して登ることにする。 やがて、時期を外せばこのコース最大の難関となるはずの、過去死亡事故が発生したというゴルジュに差し掛かる。今は、雪渓で覆われているが、ここが開いてしまうと、左岸に設置されているロープを頼りに物凄い高巻きをしなくてはならず、雪渓の上を通ればわずか5分で通過できるところを1時間も要するのだそうである(4)。リーダーのTさんも過去その高巻きから落ちて怪我をしたそうである。昨年は、このゴルジュが開いていて、中止にしたのだそうである。
頂上をバックに本谷の上を望む
  そこを越えると、表面に頂上岩峰が見え、これから辿る本谷が第一稜根元までほぼ見上げられるようになる。その後は、だんだん狭くなり傾斜が増して行く(5)。本谷の雪渓の上にできたステップ状の足跡を辿りながら、時には休み、淡々と進む。両側から迫る鋭い黒い岩稜と岩壁、はるか頭上まで突き上げるルンゼ・・・迫力がだんだん増してくる。この迫力あるロケーションの中では登ってくる人間は蟻より小さい存在である(6)。
幾重にも鋭い岩峰を突き上げる岩稜群
  振り返ると、もし滑り落ちたら止まらないのではと思うと、怖くて足が竦む程である。最大傾斜は40度くらいのものであろうか? ピッケルを使って登るのは初めてであるが、滑落したときに使うものぐらいの認識でいたが、雪に刺してそれを頼りに体を持ち上げることやバランスを崩さないなどの働きがあることも体で実感できた。

  途中休んでいる男性が牛乳パックの中からペットボトルを取り出している。見ると、中に雪を詰め、その中にペットボトルを入れて冷やしているとのこと。感心していると、「今度はビールですよ。」と500ml の缶ビールを中に入れて、リュックの中に収めている。見ている我々一堂、「これは使える!」 また、勉強・・・・。

  高度を上げてくると富良野の町が見えてくる。Kさんは携帯電話で下の友達や新道コースを登っているNさんと繋がったと喜んでいる。下でははるか頭上に見えていた夫婦岩などが目の高さに近くなってくる。下を見るとまさに奈落の底といった感じで、よく登ってきたものと感心する。

つづく


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