アポイ岳(810m)A  [冬島コース(下山時・幌満花畑経由)]    04,5,12
 94,6,5の「アポイ岳〜ピンネシリ」

 ヒダカソウ狙いで10年ぶりに再訪するが、登山道脇では目にすることができなかったが、天然記念物の高山蝶・ヒメチャマダラセセリをカメラに収めることができる。

登山地点下山
6:00
7:25
8:00
---
8:40
登山口(冬島)
休憩小屋(5合目)
馬の背(7合目)
    幌満花畑
アポイ岳
11:20
10:20
 9:50
 9:15
 8:55
[2:40]所要時間[2:25]
12:30 襟裳岬・風の館
17:00 帰宅(音更)
  この山は、日高山脈の最南端の西海岸に位置する山で、稜線上に連なる吉田岳やピンネシリを含めアポイ山塊と呼ばれている。とくに、海岸からわずか4kmのところにあり海からの濃霧とカンラン岩という特殊岩質の影響で、80種以上の貴重な高山植物が確認され、世界中ではここでしか見られない固有植物も多数ある。この高山植物の群落は、昭和27年に国の特別天延記念物に指定されて、「花の百名山」としても名高い。

  山名の由来は、アイヌ語で、アペ・オ・イ(火のたくさんあるところ〜昔、鹿が捕れるように神に祈るために火をたいたこと)による。今でも、この由来を生かし、アポイの火祭りが行われている。

  この山を初めて訪れたのは、山を始めて3年目の10年前の6月である。いろいろな固有種の花々を楽しんで奥のピンネシリまでピストンした。今回はこの時期しか見られないといわれるヒダカソウ狙いで出かけた。しかし、今年は花が遅いのとヒダカソウの花の数が少なくなったこともあってか、登山道脇ではとうとう目にすることができなかった。崕山のキリギシソウと同じ仲間だそうだが、同様に幻の花になってしまう宿命なのであろうか?

  わずか2日前まで続けていた残雪期の山スキー登山を切り上げ、夏山モード切り替え第一弾として、前日、「様似山道」を歩き、登山口の駐車場の車の中で夜を明かす。夕方入浴して夕食を摂ったアポイ山荘の立派になっていたのと平日なのに混んでいたのにはびっくりする。

  晴天の下、すでに2組の登山者が入山したあとの6時、久しぶりの夏靴と夏山スタイルで整備された道をスタートする。両側の園地ではちょうど満開のエゾヤマザクラが主人公を演じている(1)。小鳥のさえずりに迎えられて林の中へ入っていくが、途中にたくさんの地元の小中学生の高山植物の保護を訴える標語の立て札が立っている。一番印象に残ったのは「アポイ岳 アポイの花は アポイだけ」である。

  林の入口で沢を渡るが、そこには靴に付いた外来種の種の侵入を防ぐためのブラシが備えられていた。そこにある説明板を見るまでは、帰りの靴の泥を落とすためのものと思い、「ずいぶん親切だな〜」 と勘違いしただけにこの山の植物を守ろうとする地元の人々の意気込みに感動する。

  10年前より整備も進み、歩きやすくなった登山道を進む。道端には、まだ蕾のオオサクラソウ、フイリミヤマスミレ、ヒメイチゲなどの花が咲いている。このヒメイチゲだけは登山口から頂上までずっと付き合ってくれる。途中のあちこちに休憩所が設置され、クマ避けの鐘がぶら下がっている。

 のんびり歩きで1時間25分で休憩所のある5合目に到着。下を見ると、アポイ山荘やその後ろに海岸線と様似の市街地が見下ろせる(2)。ここからがこの山の核心部で、岩混じりの急な尾根歩きとなり、この山の固有種の高山植物の花々を愛でながら登れるところである。保護のためにずっとロープが張られている。

  一番先に目に飛び込んできたのは岩の間に咲いているアポイアズマギク(3,4)である。次にアポイタチツボスミレ(5)、少し登っていくとサマニユキワリ(6)が目に付くが、全体的にまだかなり花が遅れているようで、アポイアズマギクはつぼみが開いたばかりのものばかりである。

  花を眺めながら馬の背辺りまで進むと、頂上にガスが覆い始めてくる(7)。目を皿のようにしてヒダカソウを探しながら登るが、全然見つからない。8合目まで登ると、一番先に登った千葉から2年続けて来たという男性が下りてくる。「昨年15日に来たら花びらが落ちていたので、今年は今日来たが、昨年見た9合目附近のところには影も形もなかったので、そこから戻ってきた。今年は、花が遅いのだろうか?昨年は幌満花畑でも見たのだが、そこも多分まだ咲いてないだろう。」とのこと。昨年幌満花畑で見たという場所も教えていただいたので、「帰りはそちら回りで下りてみます。」と話し、別れる。 ビジターセンターの人も言っていた9合目附近で、懸命に探したが見つけることができなかった。

 10年前はピンネシリまで行くつもりであったので、いそいで登ったが、今回はのんびり花を探しながら登ったので、2時間40分も要して、ひと組のご夫妻が下山しようとしているガス中の頂上へ到着(8)。当初、自分も花の多い吉田岳までの稜線も歩いてみようと思っていたが、そのご夫妻も「ここまでの花の状況でしたら、吉田岳までも同じようなものでしょうし、このガスの中ですので、ここで止めて下ります。」とのことである。まったく同感である。

 誰もいなくなったガスの中で、寒いこともあり15分で幌満花畑を目指して下山を開始する。

 幌満花畑には、向こうのコースではあまり目にすることの少なかったアポイキンバイ(9)ヒダカイワザクラ(10)が目に付く程度であったが、ヒダカソウはここでも幻のままであった。

 幌満花畑から冬島コースへ戻るには、馬の背の上まで30分ほどトラバースするので、だいたいその分が遠回りである。馬の背に戻ると頂上を覆っていたガスもきれいに取れて晴れ渡り、遠く日高山脈の主稜線が見えている。よく見ると、5月1〜2日に登頂したトヨニ岳〜ピリカヌプリとそこから続くソエマツ岳〜神威岳も見えているのがうれしい(11)。さらに、振り向くとピンネシリと吉田岳がくっきりと見えている(12)。

 馬の背の手前で、ヒダカソウは目にすることができなかった代わりに思わぬ訪問者に出会う。目の前を小さな蝶がひらひら舞い、目の前の岩に止まる。よく見ると、前日ビジターセンターで見たこのアポイ岳と三国山付近にしか棲息していないという国の天然記念物の高山蝶・ヒメチャマダラセセリ(実長2.5cm)である。カメラに収まってくれてから飛んでいった(13)。帰宅して確かめたら、間違いなくその蝶であった。

 平日なのに、カメラを構えた人たちが次々登ってくるし、幌満コースの方を見ると、10名くらいのグループが登っている。何度か来ている人たちも異口同音に「花が遅い」と話している。

 あとは、ひたすら登山口を目指して下山を続けるだけである。5合目から1時間ほどでゴール。時間的余裕もあるので、襟裳岬回りで音更に戻ることにする。



「北海道山紀行・目次」へ     HOMEへ

inserted by FC2 system