○7/19、1839峰ピストン

 雲海の上からのご来光を眺め、スタートの準備をする(1)。北側には雲海の上に1823峰やカムエクなどがが頭を並べている(2)



 4:40、朝露に備えて上下雨具に身を包み、はるか彼方で朝日を浴びて招いている1839峰を目指してスタート。これから目指す目的地が見えているのはうれしいものだ(3)13年前の何も見えない濃いガスの中とは天国と地獄の差である。後ろを振り返れば、カムエクなどの北日高の山並みも見えている。

 北大山岳部のケルンが立つコイカク山頂を10分ほどで越え、最低コルの1560地点まで下る。高度を下げるにつれてハイマツの丈が膝下から顔の辺りまで高くなる。コルから登りに掛かってまもなくほぼ中間地点のヤオロの窓だ。かすみ草さんはここから先が未知の世界。


 7:35、約3時間でヤオロマップ岳に到着。ここにもコイカクにも今年作成されたと思われる新しい標識があった。それを手に、1839峰をバックに集合写真を撮る(4)このピークは6年前に山ちゃんと二人でペテガリから縦走してきて3泊目のテントを張って以来である。
 
 ここからは1839峰を目指して支稜線上の歩きとなる。まずは、越えなければならない1781ピークを目指す(5)自分にとっては、この先は13年前に歩いているのだが、目にする景色はまったく初めてである。こんなところを歩いていたのかと感慨にふけながら歩を進める。それにしても、13年前よりはヤブが開けて非常に歩きやすい。
 


稜線の南側には、ところどころにお花畑が広がる。黄色一色だが、よく見ると、シナノキンバイ、トウゲブキ、エゾカンゾウの3種類の競演だ(6)



ナナシ沢川の源流部を挟んだ北側には、手前にテントが微かに見えるコイカク夏尾根頭、その奥に1823峰やコイボクカールを抱いたカムエクと南西稜の展望が広がる(7)


サンシビチャリ沢川の源流部を挟んだ南にはルベツネ岳やペテガリなども見えていたが、徐々に雲で覆われ始めてきた(8)


1781ピークを越えて進んでいくと、前衛峰が迫ってくる。この登りが非常に辛かった(9)。前衛峰を越えると最後の登りである。上の方に核心部の岩場が見えている(10)
前回も一番怖かった頂上直下の岩場のところは、歩き込まれたせいか、だいぶ様子が変わっていて、それほど怖い思いをすることなく突破できた。



 11:25、テン場から6時間45分を要して、念願の1839峰に到着。ご丁寧に2枚の頂上標識が設置されていた(11)13年前は小石に赤布の付いた針金が巻かれただけの標識だった。『夏山ガイド』にも掲載されて、ずいぶんとメジャーな山になったものだ。主稜線上の山々はほとんどガスに覆われてしまったが、この山と支稜線は、まだ青空の下だった。夏の太陽を浴びて、35分休憩し、12:00ちょうどに復路に就く。

 疲れた体に復路も登り返しが多くなかなかハードだ(12)50分ほどで、前衛峰の上に立つ。ここで、帰りの水の量が心配になったことと、みんなに冷たい水を飲んで欲しいこともあり、当初からの予定通り、自分が別行動で、ヤオロマップの水場まで急ぐことにした。頂上から2時間10分でヤオロマップまで戻ることができた。

 テン場の東側に続く急な踏み跡を下る。6年前の縦走時にまさに命の水となった小さな穴の中で湧いている冷たい水だ。まずは、たらふく飲んで、自分のペットボトル以外に3リットルを汲む。往復で30分を要してヤオロまで戻って、みんなの到着を待つ。

 しかし、なかなか現れない。多少心配になり、ただ待つのはガスと強風で寒いこともあり、迎えに行くことにした。大きな声で呼びかけてもなかなか反応がない。結局自分の倍に近い時間で元気に現れた(13)

 冷たい水を飲んでもらい、残りをそれぞれペットボトルに詰めてゴールを目指す。しかし、主稜線はすっかりガスに巻かれていた。

 なんとか暗くなる前の19:00ちょうどにゴールし、14時間強の1839峰ピストンに終止符を打つ。せっかちな自分にとっては、このゆっくりズムが、全員無事登頂できた最高の極意と改めて感心した。ちなみに、13年前の自分は、ほぼ同じ時間で登山口まで下山していた。
<途中で目にした花々>

ヒダカゲンゲ

タルマエソウ

エゾツツジ

タカネバラ

シナノキンバイ
 ちなみに、シナノキンバイと見分けが難しいチシマノキンバイソウは、北海道の大雪山系や知床山系に分布するのに対して、シナノキンバイはそれ以外の増毛、夕張、日高山系で見られるとのこと。

 外見上の一番顕著な違いは花の内側にある花弁(大きな花弁のように見えるのは萼片)の長さで、シナノキンバイは雄しべよりずっと短いのに対して、チシマノキンバイソウは、花弁が雄しべと同長かやや短い。

 ※HYML仲間の花パパ・花ママのサイトより・・・

○7/20、下山

 昨夕からガスは晴れることなく、霧雨状の朝を迎える。濡れたテントをたたみ、6:00、下山の途に就く(14)

 足元が寝れていて滑るので、岩場の所は特に慎重に下る。それでも、下りは速い。1305テン場まで下りても、まだガスは晴れないが、少し明るくなってきた(15)

 あとは下るだけで急ぐ必要もないので30分ほど休憩。今回の山行は急ぐということは一度もなく、休憩も十分取ってのゆっくりズムに徹することができた。

 上二股が近くなってくるとガスから抜けて青空が広がってきた。登りのちょうど半分の3時間で上二股に到着。雨具を脱ぎ、デポした沢靴に履き替えて、ここでも1時間近くの休憩。

 下りの河原歩きは、登りの時には気づかなかった河畔の踏み跡が目に付きやすい。

 しかし、濡れた登山靴が加わって、背中がズシッと重くなる。少しでも荷を軽くしたいので、1時間ほど歩いて広い河原に出たところで、テント干しをさせてもらうことにした(16,17)

 20分ほどで乾いたので、たたんで再びリュックに詰め直す。どのくらいの水分があったのか分からないが、背中がぐっと軽くなったのは事実だ。お陰で、その後も元気よく歩くとができた。

 ここでも30分ほど休んだので、その分、登りより多くの時間を要して、登山口へ到着。

 
 札内川ヒュッテに寄り、デポしておいたゴミを回収して、ゲートまでの1時間の舗装道路歩き(18)途中でカムエクに登るという本州の6人グループに出会う。

 14:35、朝スタートして8時間35分で、延べ4日間に渡る山行のゴール。第一の目的であったかすみ草さんの初登頂のサポートを企画し、その実行に徹したyoshioさんといさむちゃん、自分的には、13年ぶりの「晴れた1839峰再訪」の念願が叶い、大満足のゴールであった。

 それにしても、彼らとの同行で、普段の自分の登山はいかにせっかちなものであるかがよく分かった。時間さえ掛ければ、長時間でも楽に歩けるということが実感できた。これで、道内で最大急登尾根のコイカク夏尾根は、3回登り、5回下ったことになる。彼らのペースのお陰で、これまでで荷物は一番重かったはずだが、一番楽に上り下りすることができた。今後の歩き方に生かそうと思う。しかし、この尾根を歩くことはこれが最後であろう・・・・。

 芽室町の新嵐山荘で3日ぶりの汚れを落とし、疲れを癒す。その後、レストランでみんなで食事を摂る。自分はそこの駐車場で泊まることにして、生ビールを飲む・・・。札幌へ帰る彼らと別れて、車中泊態勢に入った途端、10時間も爆睡してしまった・・・。

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