第2日目> ナメワッカ分岐〜通称・春別岳〜1917峰〜1903峰分岐を目指す

8/15<晴れのち曇りのち雷雨>  
6:00
8:45
9:55
11:20
13:40
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16:45
17:05
17:20
札内JP
ナメワッカ分岐
通称・春別岳
1917峰
1903分岐 
(テント設営/
 雷雨で休憩)
1903分岐発 
1903峰
1903分岐着(泊)
[8:15]行動時間
 朝、3時半に起きて出発の準備をする。4時過ぎにテントが赤く染まるので、慌てて顔を出すと太平洋の水平線が赤く燃え、札内岳が黒いシルエットなって浮かんでいる。よくみると、その北側に阿寒付近の山もやはり黒く浮かんでいる(1)。いよいよ日の出ショーの始まりである。日が昇る前に朝食を摂り、JPへ上がると、Maさんはまだ寝ていた。慌てて起き出して来て、寝坊したことを悔しがっている。4時40分頃になって、札内岳頂上の右側から朝日が顔を出す(2)。

 これから進む主稜線もずっと先まで昨夜と反対側の十勝側が朝日に照らされて、くっきりと見えている(3)。今日は、念願の1917峰からのカムエク北面との対面の日である。天気予報は午後から崩れる予報である。なんとか、そこまで天候が持ってくれることを願いながら、6:00にテントの中のMaさんに挨拶して出発する。

 ちょうどカール壁の上のコルにテントを張っていた二人の男性もカムエクを目指して、今日は九の沢南カールの1732コルまで行くとのことである。自分も2泊目はそこの予定であるが、あらかじめ水を1泊分汲んで置いたので、余裕があればもっと先まで進む計画である。彼等に「また、先でお逢いしましょう!」と挨拶して、先に出発するが、その後、彼等の姿は常に後ろに見えていたが、最後には1時間ほども差が付いてしまい、とうとう逢うことはなかった。

  まずは、札内JPから下るのであるが、初めは稜線の日高側のハイマツの中を下り、やがて、乗っ越して十勝側の花畑状の中を進む。花はナガバキタアザミとコガネギクがメインである。しかし、そのあと十勝側に続く長い笹薮斜面のトラバースは、非常に歩きづらい。これまでの登山靴のソールが剥げかかっていたので、新調した台下ろしの登山靴であり、まだ足に馴染んでいないこともあるが・・・・。ときどき稜線を日高側に乗っ越すと、後ろに幌尻岳やその奥の北日高の山並みや右手にナメワッカとイドンナップが見える。

 1時間で、1760ピーク手前のコルへ下り立ち、1回目の休憩である。そこから腿丈ほどのハイマツ帯の急斜面を20分で1760ピークへ到着する。頂上に2張りほどのテン場がある。

 目の前のナメワッカまでの稜線と二つのカールが新鮮な眺めである。いずれこの稜線も歩いてみたいところである(4)。天候は穏やかでまったく心配なさそうで、だんだん近づいてくるカムエクがうれしい。後ろを振り返ると、エサオマンの左側に、幌尻岳〜戸蔦別岳〜北戸蔦別岳〜1967峰〜ピパイロの山並みが見える(5)。

 今度は、130mほど下り、ナメワッカ分岐までの登りとなる。コル付近は背丈ほどのハイマツ帯ではあるが、気になるほどではない。日高側から吹いてくる心地よい風のお陰で、それほど汗も掻かない。上空に薄い雲が広がり始めるが、稜線を覆うほどではない。

 スタートして2時間45分、8:45にナメワッカ分岐に到着する。ナメワッカ分岐の先がそこより高い1831ピークであるが、左側から十の沢カール壁が垂直に突き上げて、その高度感が凄い。

 鋭い岩稜の1831ピークを越えあたりで、岩のテラス状のところを歩くが、その足下に咲く終わりかけのカムイビランジとの再会である(6)。この辺りにあるらしいという情報は掴んでいたが、探さなくても偶然足下に咲いているというのがうれしい。

 左側へカーブする高度感のある十の沢カール壁の上の岩の稜線を慎重に下って、登り返すと通称・春別岳(1855m)である。春別岳への登りは、斜度も緩く、ハイマツも薄く、ピークに近づくに連れて花畑状の中の快適な歩きである。

 スタートして4時間弱、9:55に春別岳到着である。振り返ると、越えてきた垂直に切り立つ1831ピークの高度感が凄い。高所恐怖症の自分があそこを越えてきたと思うとぞっとする。ちょうどそのピークを越えて下ってくる後ろの二人連れの姿が見え、その奥に越えてきた札内JPからの稜線とエサオマンが見えている(7)。

  さらに進む先を見ると、九の沢北カール壁の細い稜線を越えた先の1917峰と九の沢南カールの左側に派生する1903峰の間に目指すカムエクが覗く。この3山を「カムエク3山」と呼ぶ人もいるようである(8)。

 春別岳からの下りも藪が薄く、快適な歩きである。次の1791ピークを越えると1917峰への登りとなるが、この稜線は恐竜の背中のような鋭く尖る細い岩稜の急な登りのようである。案の定、近づいて、1719ピークから見る登りは高所恐怖症の自分には手強そうな感じである。

  とくに、1917峰の手前の小ピークまでの登りは岩を垂直によじ登る感じのところが多く、ハラハラ・ドキドキの連続である。慎重に3点確保を繰り返しながら恐る恐る登る。その小ピークを越えると、斜度も緩み快適な登りとなり、ホッとする。

 しかし、上空に雲が広がり始め、だんだん低くなってくる。振り返ると幌尻岳の頂上にときどきその雲が懸かっているのが見える。目指すカムエクは1917峰の陰で見えないので気が気でない。当然足は速くなる。

 11:20、待ちに待った1917峰の頂上である。「見えた!間に合った!」・・・5年ほど前にFu@京都さんから送られた写真を、「いずれは自分も・・・」と常に職場のデスクに飾って眺め続けてきたカムエク北面との対面である。左後ろにピラミッド峰を、右奥に南西稜を従えたまさに日高山脈の盟主に相応しい姿である(9)。この眺望が今回の山行の最大の狙いでもあり、4日間の天気予報で最もよくなかったこの日、すでに、南の方の1839峰やコイカク辺りは雲で覆われているだけに、雲に覆われないで待っていてくれたことに感謝し、十勝側のテン場で冷たい風を避けながら30分ほど休憩する。

 ここで、今日のこの後の予定を検討する。当初の予定の1732コルで泊まるには時間が早すぎるし、水も十分あるので、1903分岐にテン場があれば、1903峰にも寄りたいので、そこにするか、テン場がなければ一気にカムエク頂上まで進むことにし、1917峰を下る。今度はずっと左手にカムエク北面を見ながらの歩きである。標高が下がるに連れてハイマツが濃くなり、深くなってくる。

 12:45、1732コルのテン場へ到着する。3〜4張りほどは張れそうで、九の沢南カール底までもそれほど遠くなく、20分ほどで水が採れそうである。このころからときどきカムエクの頂上に雲が懸かったり取れたりするようになってくる。

 途中で、反対側から進んでくる単独行の男性と出会う。彼に「1903分岐にテン場はありますか?」と聞くと、「この先はカムエクまで無かったような気がします。この時間なら十分カムエクまで行けますよ。」とのことである。彼は、今日は春別岳まで行くそうである。しかし、1903分岐の辺りは稜線も広く平らなので、多分テン場はあるものと期待しながら登っていく。
 
 1903分岐への登りに掛かると、カムエクは完全に雲の中に隠れてしまい、黒い雲がどんどん低く広がってくる。しかし、主稜線から十勝側に派生している1903峰はまだ雲が懸かっていない。1903分岐まで行くとテン場があるので、今日中にカムエクの頂上まで行くのは止めて、ここに泊まることにする。

 ところが、ハイマツの枝を刈り払って一段低くなったところに明らかに人工的に作られた快適なテン場に入ると、縁に何回分もの比較的新しい熊の糞が沢山ある。どうやら、熊の寝床になってしまったようである。さすが、そこにはテントを張る気がせず、その手前の草付き斜面にテントを張ることにするが、そこにも2箇所ほど比較的新しい糞が落ちているが、かと言って、ガスの中をカムエクの頂上まで行くのも面倒になので、意を決してそこにテントを張ることにして、まだ見えている1903峰を空身でピストンしようと歩き出したら(10)、雷が鳴り出し、上空に黒い雲が広がり、突然雨が降ってくる。

 慌てて戻り、急いでテントを張り、その中に潜り込む。強風と雷雨をじっとしのいでいると、カムエクの方から男性と女性らしい二人連れが登ってくる。熊の糞のそばにテントを張っている自分にびっくりしている。1732まで下りてテントを張るとのことで、雷雨の中を下りていく。
 
 2時間半ほどして、早めの夕食を摂っているうちに、雨も上がり明るくなったので、外に出てみるとさっきまでの嵐が嘘のようにすっかり晴れ渡っていて、直ぐ側にカムエクもすっきりと聳えている(11)。せっかくのチャンスなので、上下合羽を着て1903峰をピストンすることにする。このピークにこだわったのは、日高山脈の1400m以上の全ピークを踏破している登別の神原照子さんから、次のようなメールを頂いていたからである。
 「折角行かれるのですから、1903mにも登ってきてください。分岐から20分くらいで行けまして易しい尾根です。ここは小樽の一原有徳先生から「プラチモンテ」「プリマモンテ」と教えられたピークです。わたしはこのピークに拘らず、カムエク、1917m、1903mをカムエク三山と呼ぶことにして、日高の一つのピークに挙げる予定です。」

 よく見ると、分岐から微かな踏み跡があり、浅いハイマツを漕ぎ、それは岩混じりの稜線沿いに続いている。本当に20分で頂上へ到着する。1732コルを見ると、後ろから進んできたらしい人たちと雷雨の中下っていった人たちのものらしいテントが張られている。また、八の沢カールも見え、そこに張られている2張りテントも見える。目の前のカムエクや晴れ渡った山並みを眺めながら15分で戻り、再びテントに潜り込む。

 熊が怖いので、ラジオをつけっぱなしで夜を迎えると、再び風が強くなり、雨も降ってくる。こんな天候なら熊も歩き回らないであろうと運を天に任せて浅い眠りに就く。

3日目 カムエク〜ミラミッド峰〜1823峰へつづく

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