<第1日目> エサオマン北東カール経由で札内JPを目指す
エサオマントッタベツ岳登山口まで車で送ってもらい、予備日も入れて4泊5日分のリュックを背負ってスタートする。水は北東カールで汲むので、2リットルのスポーツドリンクを薄めたものだけである。軽量化を図るためにビールは持たないことにする。登山口付近に、車はすでに6台も停まっている。表面に札内岳が見える林道跡を25分ほど歩き、過去3回歩いている(登り1,下り2)エサオマントッタベツ川へ入渓する。
暑いので、河畔に踏み跡もあるが、ほとんど沢の中を歩くようにする。当初の計画は北東カールで泊まる予定なので、のんびりと進む。いつものことであるが、沢歩きは変化に富んでいるせいか、疲れを感じないのが好きである。
とくにこの沢は明るく、広い沢で常に表面にめざすエサオマントッタベツ岳と北東カールが見えるのも好きな点である(1)。
2時間ほど進むと3人連れに追い付く。なんとその中の一人が今年になってピリカヌプリと雨竜沼湿原についで3回目の出会いとなる函館のスキー指導員の先輩のSaさんである。さらに、その中の女性が、2年ほど前に拙宅に寄っていただいたことがある一等三角点の山歩きをしている札幌のMiさんである。懐かしい再会を果たし、先を進む。
2時間20分で、997二股へ到着する。ここでびっくりしたのが、この合流地点にあった深い淵が無くなっているのである。どうやら岩や石で埋まってしまったらしい。ここからは斜度が増し、石も大きなものばかりとなる。
表面に滑滝が目に入ってくるころに上から二人の女性が下りてくる。前日に彼女らがこの山に入っていて、この日下山することを知っていたので逢えるのを楽しみにしていたHYMLの花ママとお恵さんである。フリークライミングコンビの二人はこの山への初挑戦を果たした後だけに二人ともいい顔をしている(2)。彼女らと10分ほどお喋りをして別れ、さらに登っていく。
やがて、滝を巻いて、
この沢の一番のチャームポイントである長く急な滑滝の下に出る(3)。これを登り切ると、北東カールである。
4年前にこの沢を登ったときには、なぜか5時間30分も掛かっているが、今回は4時間20分で北東カールに到着である。まだここで泊まるには早すぎる13:20である。明日の行動を少しでも楽にするために、札内JP(ジャンクションピーク)まで登ることにする。
リュックをカールに置いて、改めて5分ほど下り、勢いよく水が流れている二股まで下がり、水を5.5リットル汲む。水をそこに置いて少し下の方まで下りてみるが、追いこした3人組の姿はまだ見えない。再びカールへ戻り、腹ごしらえをして、休憩するが、上の方からガラガラと岩の崩れる音がして、どうやら何人かルンゼを登っているらしい。よく見ると、4年前に自分が間違って取り付き、進退窮まり、恐る恐る左側の林の中へトラバースしたルンゼである。無事に登り切れるか心配しながら、自分もこれまで2度下っている一番安全とされている左端のルンゼに続く岩だらけの踏み跡を辿る。
大きな岩壁のところでルンゼは二股に分かれているが、上を覗くと林の中に繋がっている左側がそのルートである。
途中からカール壁の上に屹立するエサオマントッタベツ岳を振り返る(4)。1時間ほどで稜線に出ると、うれしいことに、日高山脈の北の方も、南の方も全てがくっきりと見えている。
稜線のハイマツの中を札内JPを目指して10分ほど進む。これまで2度テントを張っているJPの一段下の狭いテン場はまだ空いているので、そこへリュックを置いてJPへ登ると、ひと張りだけテントが張られていて、エサオマン頂上方面へテン場を探しに行ったという2人のリュックが置かれている。
彼等が戻ってくるのを待って、彼等のテン場の確認をして、自分はこれで3度目になるところにテントを張る。
JPに再び登ると、まだ沈むには早い太陽に照らされて日高側だけ光っている明日から進む主稜線の方向を眺める。ナメワッカ分岐〜通称・春別岳〜1917峰〜1903峰〜カムエク〜ピラミッド峰〜1823峰〜コイカク〜1839峰、さらには、十の沢カールや九の沢カールもはっきり見えているのがうれしい(5)。
JPにテントを張っている方は苫小牧のMaさんという方で、昨日、花ママとお恵さんと一緒に中央のルンゼを登ったとのこと。若いころからかなりの山歴を積んだ方で、今は山岳写真に力点を置いて山に登っているとのことである。
一度テントに戻り、早めに夕食を摂り、夕陽に輝く日高山脈をゆっくり眺めたくて、カメラを持って再びJPへ行く。Maさんといろいろ話している内に幌尻岳の左側のずっと向こうに夕陽が沈み掛ける。
夕陽に照らされながら、その落日ショーを楽しむ(6)。やがて、陽は完全に沈み、真っ赤な夕焼けが広がる。幌尻岳とエサオマントッタベツ岳などが黒いシルエットとなって浮かび、美しい情景を醸し出す(7)。
さらに時間が経つと、上空の雲を沈んだ夕陽が柔らかく照らし、その方向には札幌方面や支笏湖周辺の山々や羊蹄山などが黒いシルエットとなって連なっている(8)。稜線で泊まるメリットは天候にもよるが、なんと言ってもこの情景である。感動の落日ショーを楽しみ、明日の天候も大丈夫なようなので、明日の日の出ショーも楽しみに、安心してテントへ潜り込む。